Update:201306.24MonCategory : unknown

第1回 プロサーファー 堀口真平「大きな波の魅力は何ですか?」

波の取り合いはストレス。
どう波を取るのか、姿勢が大切。

小山内:パイプラインはいつも混雑しているよね。自分対波という状況に集中し続けるのは難しくないのかな?

堀口:この冬、悟ったことがあるんです。ある日、エフカイビーチの方でずっと浮いていたんですが、ラインナップしているサーファー、うねりの入り方、波の種類、全部見えたんですよね。僕はパイプラインに乗りたいためだけにパイプラインにいたんです。でも、たとえ波に乗れたとしても精神的に満たされない時があった。なんかギスギスしていたんですが、その理由が分かったんです。僕のまわりにはローカルのコミュニティがある。僕と同じようなビジターがいる。そこへうねりが入ってくる。みんなパイプラインの波に乗りたいわけです。だから取り合う。そして、波を取ることができたらハッピーだと思っていた。でも違うんです。取り合うことは、やはりストレスだったんです。僕がパイプラインにいる目的はあくまで楽しむこと。そのためには、波、コミュニティ、サーファー、すべてを正面から見つめて自分の行動を考えないとならない。エフカイで待っていた時も、たまに波が外れて僕のところへ来るんです。誰もいないからノー・ストレス。まさに波対自分の状況で、これこそが僕の求めている状況だと、改めて気づかされた瞬間でした。

小山内:具体的にはどう行動が変わっていくと思う?

堀口:たとえば朝イチの真っ暗な時から自分だけ最初に入るとします。すると僕に1本目の優先権はありますよね。けれど2本目以降、誰かがパドルアウトしてきたら、次の波はそのサーファーに優先権がある。ローカルがいたら優先権はその人へ。僕は彼らが乗っていくのを待つ。そういう関係性を周囲のサーファーと築くことができたら、かつ、僕がしっかりサーフできる奴だと認めてくれていたら、僕のところに波が入った時に彼らは僕に乗せてくれるんです。「ゴーッ!」とさえいってくれる。そこがハワイの良い所なんです。

サーフィン、海や自然の良さはもっと

社会に認められていいと、僕は思う。

小山内:ハワイには成熟したローカルとビジターの関係性がある。日本はどう?

堀口:ハワイが紳士だとしたら日本のサーファーは威嚇するというか、そういう心の人たちが多いように思います。僕の親父くらいになって、サーファーの意識レベルとしては好青年でしょうか。誰が波を取っても気持ち良くないのでは、環境として正しい在り方ではないですよね。ドロップインされたからムカツクというレベルではなく、もっと根本的に意識を変えていく方がサーフィンを楽しめると思います。もちろんドロップインはルール違反ですけどね(笑)

小山内:日本のサーファーの意識レベルは低い?

堀口:ビッグウェイブのサーフィンが認められていない状況もそう。僕自身、大きな波でサーフすることは気持ちいいですが、世間に認められないとプロサーファーとしてはつまらない。自己満足で終わってしまいますからね。

小山内:ハードコアなサーファーへの理解度は?

堀口:低いというより、ないに等しいです。「危ないのに何やってんの?」とか「私には理解できません」みたいな。命をかけているのにギャランティも少ない。野球選手くらいもらってもいいと思うんですよ。でももらえないのは、日本でのサーフィンが野球ほどに認められていない。ただそれだけです。まぁ、確かに評価なんてどうでもいいやと、自己満足でいいじゃないかと、そう思うこともあるんですけど、それって寂しいんですよね。だから、僕は日本のサーフィンがもっと評価されるような動きもしていきたい。仲間とやっている海の学校もそのひとつ。子供たちにサーフィンを教えていたりするんですが、ボランティアを含めて集っているメンバーは、コンペとか関係なく、海が好きで、海の気持ち良さを共有したいと感じている人たち。僕と同じ気持ちを持っているんです。

小山内:そういえば昨年はサーフィンミュージアムをつくったよね(※注釈/2012年は伊勢・国府の浜の玄関口となる近鉄志摩線の鵜方駅近くに設けた)。

堀口:伝えることが大切だと思っているんです。サーフィンとは何か。ビッグウェイブとは何か。サーフィンの何が気持ち良いのかを表現して伝えていきたいし、社会的な認知度をもっと高めていきたい。ONLY A SURFER KNOWS THE FEELINGEVERYBODY KNOWSにしていきたい。何より海に入ると細胞が喜ぶといった、サーフィン自体に人をポジティブにさせる力がありますからね。もっともっと多くの人にサーフィンや海を楽しんでもらいたいし、サーファー、そして海や自然の大切さが認められる社会にしていきたいです。

photo by U-SKE @PIPELINE,HAWAII

<ゲストスピーカー>

堀口真平 ( ほりぐちしんぺい )

1982年8月25日生まれ。和歌山県串本町出身。ビッグウェイバーでありシェイパーでもある父親と幼少期から行動をともにする。そのため冬のハワイ歴は実年齢と同じく31年。ハワイのローカル・コミュニティとも親しい間柄にある。またオアフ島のビッグウェイブスポット、ワイメアの初ドロップはわずか15歳で経験した。プロサーファーとしての最たる特徴は、良い波のところに身を置く行動スタイル。ハワイ、インドネシア、タヒチ、日本と自然のサイクルと呼吸を合わせるように地球上を駆け巡る。

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