Update:201307.03WedCategory : コラム

エシカルってこういうコト、という2つの事例

 “エシカル”という言葉、なんとなく聞いたことがあっても、その意味合いを聞かれると「う〜ん、なんだっけ」という人、案外少なくないのでは? で、そのエシカルという言葉、意味としては「倫理的」であるということ。それはつまり、以下のふたつの例のようなコトなのだろう。

パタゴニアが始めた“エシカル”なキャンペーン

 パタゴニアが始めた“エシカル”なキャンペーンは、再来週の7月21日に迫った参議院議員選挙に向けてスタートしたもの。「環境に投票を」というコピーを掲げ、お気に入りの自然の場所や動物、アウトドアアクティビティに対する思いをツイートしてもらう内容だ。

 次から次へとツイートされる内容には、海が好き、山が好き、地球が好き、おいしいゴハンが好き、などなど、とても私的で、いろんな角度から環境を思うメッセージが込められている。パタゴニアに聞くと、特に選挙への立候補者が環境に対してどのような政策を考えているか、それ自体を一覧にしたり問うことはしないという。しかし、投票に際して「環境」がひとつの基準になってくれれば、という思いが今回のキャンペーン実行の背景にはあったとする。これまで環境への配慮を、洋服を作ることで広く訴えてきた同社ならではの“倫理”が生み出したアイデアなのだ。

トヨタが展開するアクア・ソーシャル・フェス2013

 もうひとつは、トヨタが展開するアクア・ソーシャル・フェス2013。全国の水辺環境を舞台にするアクションプログラムで、ビーチクリーンをしたり、干潟に生息する生き物を探索したりと、日本にある自然の再発見につながるキャンペーン内容となっている。キャンペーンの主はアクアというハイブリッド車。クルマと環境は切り離せない間柄なものの、ハイブリッド車の開発や今回のようなキャンペーンを通して、環境への負荷軽減へのアプローチを見せる。これもトヨタの“倫理”を示したものといえる。

 先日インタビューした新書『中身化する社会』(星海社)の著者・菅付雅信さんによれば、近年行き来しているアジアと欧米でふたつのライフスタイルを見たという。ひとつは、急成長を遂げるアジアで見た激しく経済的に豊かなライフスタイル。もうひとつは、経済成長を遂げた欧米で見た、物質だけを拠り所としない肩の力が抜けたライフスタイル。それでは経済成長を遂げた日本の行く末とは……

 改めての経済成長を狙いに行くのもいいけれど、お金の虜になった後に色々と省みて、エシカルに生き始めた欧米の人たちの知性にも視線は向けておきたいもの。パタゴニアやトヨタの試みは、これからの日本における新しい生活観を表現したキャンペーンなのだといえそうだ。

パタゴニア「環境に投票を」キャンペーン http://www.vte2013.jp/
アクア・ソーシャル・フェス2013 http://aquafes.jp/top/

written by 小山内 隆