Update:201308.06TueCategory : BLUERマガジン

3年弱、103カ国・地域をめぐった竹沢うるま写真集『Walkabout』


 たとえば、オーガニックなライフスタイルに多くの注目が集まる一方で、その国の人口の約7割は肥満傾向である事実には多くが疎い、ということがある。

 情報とは、光の当たり具合で価値となり、無価値ともなるのである。

 3年近くをかけ、103もの国と地域を渡り歩いた写真家・竹沢うるまさんは、日本という国は少数派に属するのだと分かったことが収穫のひとつです、といった。少数派とは、簡潔にいえば先進国という意味。その恩恵は生活全般にわたる。

 生まれた時から目の前にあるから、恩恵を恩恵と分からず、あって当たり前だとする。季節ごとに新しい洋服が買え、清潔な場所で三度三度ゴハンがお腹一杯に食せ、電車やバスは時刻通りに運行される。そうしたことが当たり前でない環境の方が世界では多数派なのだと、竹沢さんは自分の足で歩き、目で見て、全身で感じてきた。

 さらに、日本は70年近く他国と戦争をせず、経済で壊滅的な状況から復活し、世界に貢献していることが素晴らしいといった、他国の人間だからこその日本に対する視点も聞くことができた。

 1週間に満たない旅行だけでは、癒しを目的にリゾート地を訪れるだけでは、竹沢さんのような知見は得られない。得られないから、実際に起きているにもかかわらず、竹沢さんが価値を見出した情報に関心を抱くことは難しい。その難しさは、社会に生きる多数派の人に共有される。だから、3年をかけたからこそ得られた知見に触れられる、『Walkabout』のような写真集には深い意義がある。

 ダイビングの世界で写真家としてのキャリアを重ね、今回はなるべく海に近づかないルートを歩んだ。そのため感情はいつも起伏に富んでいたであろうことが、掲載された写真からは想像される。撮影された35万点から厳選された280点の1枚1枚から、竹沢さんの強い好奇心、驚き、悲しみ、優しさが溢れ出しているからだ。

 写真集は全320ページというボリューム。また現在、写真集から35カットを厳選した写真展をキャノンギャラリーで開催している。次なる旅はまだ未定であるものの、日本の捉え方が変わったという竹沢さんの転機となりうる写真の数々。世界は広い、そして深いという言葉の意味を噛みしめられる作品群となっている。

<会期>
東京・銀座キャノンギャラリー  8月1日〜7日
名古屋キャノンギャラリー    8月22日〜9月4日
大阪・梅田キャノンギャラリー  9月12日〜18日
仙台キャノンギャラリー     10月3日〜15日
札幌キャノンギャラリー     10月24日〜11月5日

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