Update:201407.23WedCategory : BLUERマガジン

砂浜の消失を理由に千葉の14海水浴場が閉鎖。砂はどこへ?

7月22日付の読売新聞は、千葉県の九十九里浜にはかつて海水浴場が36カ所あったものの現在は22カ所にまで減少してしまったと報じている。その理由は砂浜の減少としているが、ではどうして砂浜が減少してしまうのか。同記事では「砂の供給量の減少」に理由を求める千葉県の分析を掲載している。

九十九里浜には、北にある屏風ヶ浦と、南にある太東崎の、それぞれの崖が波に浸食されることで砂が供給されてきた。しかし1960年代以降、波を打ち消す消波堤を多数投入。投入の主たる目的は災害対策で、台風時などの大きな波から近隣住民の生活を守ることにあった。

その結果、災害防止の効果を得ることはできたが、波の消滅は砂浜の消失を招いた。崖を削る波が失われ、浜の砂は波にさらわれる一方となってしまったのだ。

砂の供給源という観点から考えると、もし近隣に大きな河川があれば(※九十九里浜にはない)、それもまた供給源となる。けれど国内の河川の多くは治水を目的にコンクリート化されていて、かつての量ほどには砂が海へ流れ込んでいない。治水の目的はもちろん防災。洪水などの災害から河川近くの住民を守ることが目的だ。

海にしろ、川にしろ、税金はまず付近住民の生活を守ることを最優先に使われる。そのための消波堤や消波ブロック、治水なのだが、結果として海水浴場の消滅を招き、地元には観光資源の消失というマイナスの効果をもたらしてしまった。

こうした状況にさらされて、考え時だと捉えた地域もある。

たとえば湘南でも千葉と同様の状況にある。つまり海岸が浸食され、砂浜が失われつつあるのだ。そこで茅ヶ崎市では税金を使って砂を投入することにした。この養浜(ようひん)と呼ばれる事業のおかげで、近年では効果が見られ、砂の減少は止まり、幅広い砂浜が定着してきたと聞く。

鎌倉市でも同様に砂を投入している。だがこちらでは、まだ好結果につながっていない。以前は海水浴場だった稲村ケ崎は、砂浜の減少を理由に閉鎖されたままである。

とはいえ、茅ヶ崎や鎌倉のように、養浜による砂浜復活を目指す背景には、海や海岸線を資源とする考えがある。地元のためにも生活に砂浜を、海を、取り戻す。そのような発想が養浜というアクションへつながっているのである。

海から市民の生活を守ることを最優先とするのは当然。そのうえで、地元にある砂浜、海にどのような意義を見いだすか。

今回の千葉のニュースは一例に過ぎない。日本全国、消波ブロックを投入するだけの場として海を捉える発想とは、もう縁を切って欲しいところである。

砂浜に埋められた消波ブロック。満潮時には砂浜がなくなってしまう海岸もある。

読売新聞 千葉・九十九里浜、砂浜消失…14海水浴場閉鎖