蒼氷のエクストリーム「アイスクライミング」
Photo: http://www.comespan.com/span/dunyanin-en-tehlikeli-10-sporu/
息さえも凍りつきそうな世界に立ちそびえる蒼氷を、アックス(ピッケル)とクランポン(アイゼン)で登るスポーツ、アイスクライミング。山のジャンルの中では特にマイナーな部類であり、名前は聞いたことあるが、実際に見たことや経験したことのある人はごく僅かではなかろうか。
だからこそ知る機会が少ないアイスクライミングの世界を知っていただきたいと思う。
▼フィールドへのアクセスが困難。しかし仲間と過ごすかけがえのない時間も
まずアイスクライミングは当然ながら氷を登るスポーツ。そのためフィールドとなる場所へ行くにはそれなりに大変な苦労が必要となることが多い。
地図には記されていないルートの冬山を登ることも珍しくない。アクセスが容易でアイスクライミングに集中出来る場所は稀であり、とことんアイスクライミングを楽しみたい場合は雪上でのテント泊をすることもある。それもまた一つの楽しみでもあり、夜になれば火を囲み、同じ趣味同士の仲間だからこそ厳しい環境の中でも楽しめるかけがえのない時間がある。これは他のスポーツに比べ中間との距離がグッと縮まる要因の一つかもしれない。
Photo: http://www.squamishchief.com/community/no-need-to-hibernate-this-winter-1.1527400
▼アイスクライミング専用のアイテム
フィールドに到着し目標の氷壁へ来たら次は装備の準備。通常の冬山に使うアイテムとは違いシャフトが大きくカーブしたアイスアックス。
Photo: http://www.petzl.com/en/Sport/Ice-axes#.VGMuGfl_uJp
先端の爪の形が特徴的なクランポン(アイゼン)。
Photo: http://www.petzl.com/en/Sport/Crampons#.VGMuGvl_uJq
その他、氷壁に支点を作る為のスクリュー、ロープやカラビナ、スリング、ハーネス等、様々なアイテムを用意する必要がある。こういった多くのギアを装着し、氷壁の前に立ったときのテンションは計り知れないものがある。またギアにのめり込み、山のギアマニアになってしまう人も少なくない。実際、ほとんどのアイスクライマーはギアマニアかもしれない。
Photo:http://www.planetfear.com/articles/The_2012_PlanetFear_Winter_Climbing_Kit_List_1124.html
▼ 重力を感じつつ氷の世界を登る
両手に持ったアックスを氷に突き刺し、氷に蹴りこんだつま先でバランスを保つ。ロッククライミングと違いある程度自由に場所を選んで登れるが、一手一手をパズルを解くように考えながらルートを選定し登っていく楽しみはアイスクライミングにもある。そして、他のエクストリーム・スポーツに比べスピード感はないが、自身の力で登っているという感覚、高度感、そこから見える見渡すかぎりの氷の世界。そういった要因が徐々にアドレナリンを放出させ、トップまで登った時の開放感によってアドレナリンは爆発的にMAXとなる。そしてロープで身の安全を確保し続けてくれた仲間への信頼も高まるだろう。登っている姿は一見地味なようだが、クライマーの脳内は他のエクストリーム・スポーツと同じようにアドレナリンが渦巻いていることは間違いない。
Photo: http://www.redbullillume.com/stories/news/article/adventure-photography-lights-up-great-outdoors-photo-contest.html
▼見ているだけでも楽しいコンペティション
アイスクライミングを体験しなくても世界で開催されている大会を見るのもまたとても楽しい。競技としてのアイスクライミングは通常のアイスクライミングとは違い非常にテクニカルな技術が必要とされ、そのルートに挑む選手たちの超人的なバランスやテクニックは眼を見張るものがある。初めて見る人はイメージするアイスクライミングと全く違ったその競技に驚くだろう。
YOUTUE – 2014 UIAA Ice Climbing World Cup
もし少しでもアイスクライミングをやってみたいと思ったら、敷居は高いかも知れないが勇気を持って一歩を踏み出し、山の専門家がいるショップへ出向いてほしい。その一歩に必要な勇気は、アイスクライミングに必要とされる勇気に比べれば、とても小さな勇気でしかないことが分かるだろう。