Update:201506.15MonCategory : BLUERマガジン

シャーク参戦でウェアラブル・サーフウォッチは戦国時代に突入

サーファーの時計の老舗といえば、「SHARK(シャーク)」のブランドネームで愛されているFREESTYLE(フリースタイル)のサーファーズ・ウォッチ。

防水機能はもちろんタフで安く、カラーが豊富。海の中でも安心して装着できる時計として、サーファーの間では一斉を風靡し、今もなおファンを世界中にもつ老舗ブランドである。

そのサーフウォッチ。今までは防水機能とタイドグラフの内蔵までだったが、ITの進化によって時計がスマートフォンの子機のような役割を果たしはじめている。受信、発信が可能な時計、いわゆるウェアラブルウォッチとして進化し、その波が押し寄せている。

老舗「SHARK(シャーク)」は後発となるが、かなりコストダウンしたそのウェアラブルウォッチ「SHARKTOOTH(シャーク・トゥース)」を本国で発売したことで、IT型サーフウォッチが戦国時代に突入する様相だ。

そんな進化したサーフウォッチを先駆けて発売したのは、世界の総合サーフブランドとして昨今ではその人気を盛り返しているリップカール社である。サーファーのための腕時計として「Search GPS」と呼ばれる時計とアプリをどこよりも先駆けてリリースしたのは2014年のことだ。

 via: RIP CURL GPS ONE

タイドグラフがついたサーフウォッチでありながら、サーフィン中に装着すれば、その後のbluetoohでの同期により、アプリ上で自分のサーフィンの距離や本数、スピードなど、自分の履歴を残し閲覧が可能、また世界のトップサーファーのサーフィン履歴や、世界中のサーファーと繋がることによって、そのトラッキングを共有することができるという画期的な時計だ。

BLUER過去記事 参照:老舗サーフブランド・リップカールのIT戦略

リップカールは、これにより世界中のサーファーのネットワーク構築を意図するかのような戦略も垣間みられ、彼らのIT化促進の本気度が見て取れる事業でもある。

その後発とはなったが、横のり系のみならずタウンでのファッションウォッチとして人気を博すNIXON(ニクソン)も、「ULTRATIDE」というサーフウォッチを発売したばかりだ。

via : NIXON ULTRATIDE

これはリップカールとはおもむきが少し違い、その名のとおり、潮汐表に加えて、世界中のリアルタイムな波情報(波予測)を閲覧することができるウォッチ。

そして今回の老舗「FREESTYLE」から発売の「SHARKTOOTH(シャーク・トゥース)」は、リップカールの「Search GPS」とNIXONの「ULTRATIDE」のイイとこ取りをしたような商品にも思える。

 ・世界中の波情報(波予測)データが閲覧可能
 ・もちろん世界中の潮汐も完備
 ・スポーツモードでサーフィンの時間、距離、カロリー、速度(平均および最大)、高度、方向などを記録、スマートフォンappで閲覧可能
 ・音楽のコントローラ機能(制御機能)
 ・カメラのコントローラ機能(制御機能)




via : FREESTYLE SHARK TOOTH 

つまりは、リップカール「SEARCH GPS」のトラッキングレコード(自分のサーフィンを記録できる機能)と、世界中の波情報(波予測)が閲覧できることに加え、音楽再生やカメラなどのリモコンのコントローラ機能も含めるなど、まさに時計とスマートフォン間の操作性を向上させている楽しみも盛り込まれている。

また注目は大きく2つある。

1つは「SHARK TOOTH」の価格がかなり安いことだ。

既に発売されているUSでは120ドルと安い。一方、NIXONはUSの正規で300ドル、一方、もっともこのビジネスを最初に開始したリップカールの「SERCH GPS」は400ドルともっとも高い。もちろん、後発になればなるほど、後発の武器を活かし、商品の差別化と価格の安さを打ち出さない限り難しいゆえの価格戦略。そしてSHARKは、持ち前のカジュアルさを武器に、時計のインターフェースや文字のシンプルさに加え、アプリも高度な表現ではなく、なじみやすいインターフェースを採用しているように思える。

3社にとって、当然、価格はユーザーが選定する大いなる要素の1つでもあり、その点、SHARKは有利には見えるが、そもそものブランド・ファンや付加価値に対し、ユーザーが何処に、いくらまでお金を出すか、というところだろう。

もう1つの注目は、サーフィンが記録できるトラッキング機能とは別に、波情報を提供している波情報カンパニーの戦いの構図である。

1番手のリップカールは、IT波情報としては老舗の「MAGIC SEAWEED(マジックシーウィード)」の波情報を活用。一方で、NIXONとFREESTYLEは、今や、波情報としてはメディア広告事業を含めて、もっともビジネス的に成功しているともいえる「SURFLINE(サーフライン)」の波情報を活用している。

グローバルな波情報といえば、ほぼこの2社が大手独占状態でもある。本体となる時計を縁の下で支えるこの2社の波情報予測における、情報進化の戦いでもある。

ただ今回、「SHARK」にはSURFLINE社の世界の波を予測する通常の波情報に加えて、「BUOY・WEATHER」「FISHTRACK」という彼らSURFLINE社内の並列チームである気象と、フィッシャーマン向けのメディアであるFISHER TRACKという魚群探知予測を行う研究チームも参加していることは非常に興味深いことだ。

さて、サーフウォッチ。

ウェアラブルの時計としては、リップカールの登場も、実に世間のウェアラブルからすれば、かなり遅い登場だった。ただし海の中、という特殊性もあいまって時間をかけて各社が開発し、現在に至るわけだが、ここに来て加速的に各社がしのぎを削りはじめたこの行く末に注目したい。

今後の差別化は、おそらく時計のコストダウン以上に、ユーザーにとっていかに便利な機能を盛り込むか、ということが本質的には問われるに違いない。

そして、われわれ日本人にとっては、日本仕様にカスタマイズされた「見やすいウォッチ」の画面とアプリインターフェースの改良を望むばかりだ。

※価格は各ブランドの公式価格(本国)によるオフィシャル価格であり、日本の価格は別に設定されていますのでご注意ください。