Update:201601.07ThuCategory : BLUERマガジン

暖冬のリンゴを見ながら思う「アウトドア」が持つ可能性

2015年のカウントダウンとともに放送されるNHKの「行く年くる年」には例年のごとく曹洞宗の大本山、永平寺が映し出されていた。

例年雪に覆われている永平寺に雨が降っている。あの永平寺に雪がない…。

今年の暖冬は異常なほどだ。

筆者の実家は長野の盆地にあり冬夏の寒暑の差が大きい典型的な内陸性気候。晴天率が高く年間の平均降水量が約900ミリメートルと、全国でも有数の少雨乾燥地帯。そのため、よく豪雪地帯だと思われるが、ほぼ雪が降らない特異な地域だが、唯一、寒くてどうしようもないという特徴の地域である。

しかし、今年の正月は暑くてストーブもいらない。朝は寒いのだが、陽が昇ると暖かくなりストーブが不要なほどだ。

このところの気候変動はいわずもがな、エルニーニョ現象にもかかわる暖冬なのか、これほど温かいお正月は自分の人生の中でも経験がない。

こたつの上のリンゴに目をやると、長野ゆえに立派なリンゴがゴロン。

リンゴの皮をむく父のそばで、博学の兄がいう。

「もう長野ではリンゴが栽培できないかもしれないらしいよ」。

長野は青森と同様にリンゴの産地だが、厳しい寒暖差が、写真のような甘いリンゴを作り出すという。

しかし、今年に限らないこのところの暖冬によって寒さが保証されなくなれば、リンゴはもっと北に行かないと生産できない。できたとしても、写真のようなジューシーな蜜入りリンゴは、できなくなるというのだ。

暖冬の異常さゆえの「もしも」論にすぎないのだが、確かに、気象の変化によって農作物や漁業なども含めて「食」は気候に大きく左右される。

いままで温暖化や気候変動といえば、自分の身近なサーフィンやスノーボードなどによる影響ばかりに目が行っていたのだが、こうして身近な食文化がもしや失われるかもしれない、という話は、実に切実でもある。食を生産する方々は、それこそ自然に向き合って生きているのだから頭が下がる。

かつて、何気なしにみていた歴史ドラマでこんなくだりがあった。

「冬は辛い事ばかりではない。冬が寒ければ麦がよく育つ。そうなれば飢えで亡くなる民が減る。また寒いと風邪にかかる人は増えるが春、夏、秋の疫病は少なくなる。つねに自然から常に学び、自然の中から強健になれ」。

寒いのは勘弁だが、自然の摂理はうまくできているのだ。

そして、またリンゴを見て思う。

アウトドアスポーツ、特にサーファーやスノーボーダーの存在だ。

九州大学の准教授の清野 聡子先生という海岸に関する研究を長年続けられている著名な先生がいらっしゃる。

かねてから清野先生は「サーファーってすごい存在なんですよ。日本全国の海岸にサーファーはいますよね。この人たちって、私からすると、サーファーという”生物”に思えるのです。1年中、海に入っている生物ですね。つまり1年中、ものすごいデータをもっているんですよね」

もうかねてからずっと、この清野先生の持論に興味を持っているのだが、サーファーや、スノーボーダー、または他の自然に身をおく趣味をもつ人々は、その場所の気候や海水温がどうだ、とか、具体的な気温がどうだ、など、機械が計測できない「人の計測データ」を含めてをリアルに現場にいる特異な人だちであり情報収集が可能な人々である。

気候変動はグローバルな問題として国際的に取り組まれているのだが、アウトドアな人々はそれこそ世界中に膨大にいる。

これらの諸問題の解決はまったくもって容易ではないが、コツコツと状況把握するためのデジタルとアナログデータを持ち合わせているアウトドア人の存在は、データが蓄積されたりフィードバックされれば、何かしら活用できるはずでもある。

楽しいレジャーに変わりはないがそのようなソリューションのために活用されるのは素晴らしいことなのではないか。

目の前で、父がむいてくれたリンゴがジューシーにおいてある。

そんな、こたつとリンゴのある日常がありがたいと思える1月1日、
そしてこのBLUERも、楽しい事のみならず、皆様の「生活」の役に立てる存在になりたいと誓う元旦吉日にて。

BLUER代表 
田中菜穂子 
Naoko Tanaka

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