EDDIE AIKAU Opening Ceremony
2015年12月のハワイ・ノースショアより
季節が冬へ移っていくのと同時にうねりが入り始め、世界中のサーファーを虜にする波を迎えるハワイ・ノースショア。その中でも特に賑わいをみせる12月のノースショアは今シーズンも沢山のサーファーを熱狂させていた。
12月3日、遭難したホクレア号から仲間の救出のためサーフボードに乗って消息を絶った「エディ・アイカウ」を称えて、12月1日から翌年2月末までの間に20ftプラスの波が来ると開かれるビッグウエイブコンテスト“Eddie Aikau”のオープニングセレモニーがコンテスト会場となるワイメアベイで行われた。今年で31回目となる今シーズン。選手の輪の中に二人の日本人の姿があった。一人はパイプライナーとして長年ノースショアを攻め続けている脇田貴之。そしてもう一人は、招待選手のリストにはいなかった堀口真平だった。選手としての参加ではなかったものの、ハワイに住み、アイカウファミリーとの親交を深めていた真平はこの日イベントのサポートとして参加していたところを、アイカウファミリーに促され輪の中に入ることを許された。10代の頃からワイメアの波にチャージし続けている真平だけに、憧れの“Eddie Aikau”に一歩近づけたことはとても嬉しいサプライズ。近い将来彼も招待選手のリストに名前が入ることが期待される出来事となった。
冬のシーズンの中でも比較的穏やかな天候に恵まれ、安定した波が多い12月だが、今年はサイズアップしても風が合わなかったり、雨が降ったり止んだりの日が続いたり、パイプライン・サンセットには小さすぎるサイズまで波が下がったりと、ノースショアの美しいチューブを観覧することがあまりできないコンディションだった。
もちろん、それでも日本の台風スウェルやそれを上回る波が毎日待っている。
新井洋人、大原洋人の海外遠征組を筆頭に、日本から来ていた若手サーファー達はその中でも比較的よいコンディションでサーフできるエフカイ・ロッキーなどに集まって技を磨いていた。短い滞在だったがハワイ入りしていた日本サーフィン界のカリスマ大野修聖の姿もそこに見ることができた。
11月後半からウエイティングされていたトリプルクラウンの第2戦VANSワールドカップ・オブ・サーフィン。サンセットのブレイクポイントが一段と遠くに感じられるビッグサイズでのコンテストには大原洋人と、日本人初となるWSL入りを果たしたカリフォルニア在住の五十嵐カノアがクレジット。大原洋人は初戦をハイスコア8.17ptを叩き出し見事にラウンドアップを果たすが、DAY2、サイズ、水量共にトップサーファーのメンタルが試される10ftオーバーのコンディションに苦戦し、残念ながらラウンド3で敗退。世界のトップツアーWCTへの切符を手にした五十嵐カノアもDAY2のヘビーコンディションに一歩及ばずラウンドアップを逃してしまった。やはりこういったヘビーコンディションになってくると、サンセットの経験豊富なローカル選手達は強い。そしてまた、ビッグウエイバーとして世界の波にチャージしているイアン・ウォルシュも難なく波を乗りこなしていたことが印象的なコンテストだった。そんな中、常にハイスコアでラウンドアップを続け当然のようにファイナルまで駒を進めてきたミック・ファニング。風でコンディションを落としてきていたサンセットでディープなチューブをメイクし、自身初のサンセットでの優勝を手にした。
ノースショアそして、WSL最大のイベントパイプラインマスターズも続いて開催された。年々盛り上がりを見せるマスターズは朝早くからパイプライン前のビーチを人で埋め尽くし、ノースショアの一本道は連日、コンテストが終わるまで渋滞が続いた。ただでさえ見ごたえのあるパイプラインマスターズで、今回いくつものドラマチックなシーンがあった。
混戦の中、トリプルクラウン、来シーズンのWCT残留、そしてワールドチャンピオンが決まるという、選手にとっても一年の締めくくりとなる最後の1戦。この試合を最後に選手の引退を表明していたCJ・ホブグッドは、「まだ引退にはもったいないのでは!?」と感じさせられる気迫あるライディングでQFまで勝ち上がる。最後のヒートを終えて海から上がってくるCJを称え、ビーチから惜しみない拍手が彼に届けられた。
今シーズンの間に兄を亡くしたミック・ファニング。彼とのヒートが始まる前に、ケリー・スレーター、ガブリエル・メディーナは会場に来ていたミックの母の下にお悔やみの言葉を届けに向かった。ビーチの注目を集めた彼らの行動に、世界を戦う戦友の友情を感じずにはいられなかった。
ハードコンディションとなったDAY3は、ローカルサーファー メイソン・ホーがパイプラインの大量スピッツと共にワイルドなチューブをメイクして会場の仲間たちを大いに沸かせるパーフェクト10を出した。勢いに乗ってラウンドアップを続けたメイソンだったが、
その後のウエイティング期間には更にコンディションを落とすことが予測され、サイズもブレイク状況も物足りないコンディションで始まったFINALDAYの波に上手くサイクルが合わずファイナルを目前にしてアドリアノ・デ・ソウザにその席を明け渡した。
今年度のトップガブリエルメディーナとミックとのセミファイナル、ミックがリードするヒートの終盤戦、メディーナが高さのある360エアーをメイク。パイプラインではポイントを出すことが難しいと言われるエアーで逆転の6.50ptを出し、ファイナルもう一つの席に着いた。
コンディションを更に落としてのファイナル。チューブがあまり開かないプアーなコンディションの中、バックドアのチューブをメイクしてきたアドリアノ・デ・ソウザを追うメディーナ、トリプルクラウンの優勝が決まったメディーナは、整わないコンディションでポイントが出せる波に恵まれず、逃げ切ったアドリアノ・デ・ソウザが優勝とワールドチャンピオンを手にした。
活躍著しいブラジルサーフィンを象徴するようなファイナルは、黄色と緑にビーチサイドが染まりポルトガル語が飛び交うパイプラインは、まるでブラジルにいるような異様な熱気に沸いていた。パイプラインマスターズ、トリプルクラウン、ワールドチャンピオンと全てをブラジルが独占。会場では「ブラジルサーフィンの時代」の訪れを囁かれる日となった。
まだまだシーズンの続くノースショア。ジャパンプロサーファーも多く足を運ぶこれからの時期、「VOLCOM PIPE PRO」なども開催され後半シーズンもノースショアから目が離せない。