Update:201602.11ThuCategory : BLUERマガジン

「サーフィン」がオリンピック競技になるならば

サーフィンがオリンピック競技になるかどうかが期待されている。

サーフィンは世界で実に3500万人もの人口を擁する競技だが、既にオリンピック競技である野球が1000万人、ヨットは500万人の人口ということからすれば、今回、候補に絞られたことは何ら不思議ではない。

サーフィンをオリンピックにしようという活動は、ISA国際サーフィン連盟が随分前からIOCに対して働きかけてきたもので、ながらく20年もその活動をやっていた。

ISAはアメリカ・カリフォルニアに本部を置く世界のアマチュアサーフィン組織を束ねるような役割を果たしている組織で、世界にはISAに所属している国が200カ国もあり、アメリカ、オーストラリアなどのサーフィン大国もあれば、パプアニューギニア、モロッコなど、サーフィン人口が極小である国、またドイツやモンゴルなど海がない国も参加している。

日本はどうかといえば、レジャー白書によるところの70万人という人口を有する国。レジャーとしての側面もあるので決してメジャーなスポーツとは言えないが、海に囲まれた地理条件でビッグウェイブこそ条件次第となりレアケースだが、季節や気象条件が良ければ絶好のサーフポイントの宝庫であることは間違いない。

さて、サーフィンがオリンピック競技の候補になったことで、もっとも喜んでいるのはISAに本拠地を置くアメリカとオーストラリアだ。彼らにとって、サーフィンはまさに「国技」だからである。

特にオーストラリアは世界有数のサーフィン大国と言われ、日本にとっての野球のような存在で幼少期に男の子が野球やサッカーをやるように、オーストラリアにはサーフィンがある。学校の授業にもあるし、プロ選手になれメジャー新聞にも掲載されるようなヒーローでもある。

また、アメリカやオーストラリアは企業との連携により「SHOW BIZ(ショービズ)」としても成立しビジネス市場として成熟してきた歴史がある。企業が良い製品を作り出しサーファーたちが検証してフィードバックし、さらに良い製品がブラッシュアップされて一般ユーザーに届けられる。スポーツ用具しかり、サーフファッションでの市場が大きい。海との関わりのあるファッションスタイルを提案し1000億円企業が誕生しマーケットを率いている。それがサーフィン市場だ。

日本は、アメリカ、オーストラリアの大きな大きな市場動向に合わせながら、日本独自の地域性のあるローカルブランド企業が誕生し規模には勿論、かなりの格差はあるが独自の文化も生み出してきた。スポーツとしてのサーフィンも、独自性をもって進行している。

さて、サーフィンがオリンピック競技になるかもしれない今。

この最初の「大役」が東京オリンピックの場で行われようとしている。東京での開催といえども、おそらくISA世界サーフィン連盟の大いなる主導権とバックアップのもとに準備がなされるはずである。

仮にオリンピック競技として正式決定した場合、世界に対し、日本のフィールドで行うというプレゼンテーション力が必要だが、ISAに任せることなく、国内アソシエーションや、その海岸または施設、開催県や市などの行政が「サーフィンというスポーツ」の魅力をアピールしていかなければならない。

その場合、サーフィンができる場所が日本にはたくさんあること、サーフィンしているプロサーファーたちが魅力的であることをアピールできるのは、おそらくサーフィン関連アソシエーションや市場を構成する国内メーカーや国内メディアしかいない。これらの組織の発信力が試されることになるだろうと思うし、瞬間的ではなく永続的な発信が必要になる。

つい先ごろ、NHKのBS放送において、ハワイ・ノースショアの「スポーツとしてのサーフィン」の面白さを番組化していた。

まずは世界最高峰のハワイから!ということだと思うが、日本の海でのサーフィンの面白さについては当然語られずに至っている。

サーフィンがオリンピック競技になるかもしれない今、日本のフィールドでの発信をそろそろ始める必要がある。

日本の豊かな自然、サーフポイント、サーファー。

世界で勝てるに違いない若手も出てきてはいる日本だが、まだ世間にPRするには素材が整っていない。

オリンピックのような公の場に出ていくことになるならば、プロサーファーとして技術だけではなく、オーストラリアのように「人間教育」やプロとしての「発信教育」も必要になる。仮に2020年にオリンピック競技となった場合、組織やプロ選手についても、世間から評価されるポイントになるだろうと思う。

今、2016年。あと4年。長いようであっという間の時間をいかに使うのか。

2020年が本番である。

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