【VISSLA注目のクリエイター#3】ブライス・ヤング
数ヶ月前にVISSLA USAの社長であるポール・ナウディに「あなたの好きなサーファーは誰ですか?」と訊ねた。
「沢山いるからな。」と前置きして、腕を組んでしばらく考えた挙句、現役で最もうまいと思っている2人のサーファーの名前を挙げてくれた。
1人は、彼が過去15年以上に渡ってサポートしていたデイブ・ラスタビッチ、そしてもう1人がブライス・ヤングだった。
ブライスは1990年生まれの25歳。オーストラリアのレジェンドであるナット・ヤングの息子で、兄はロングボードの世界チャンピオンでもある、ボー・ヤングだ。
VISSLAというブランドが設立され、彼がプロモーションの最前線に立つ事になるまで、メディアにも殆ど取り上げられた事がなかったサーファーだが、ポールは「ブライスほどオールラウンドで、爆発力のあるサーファーを見た事が無い。」と言った。
特にAlaia(ブライスはティンバー、つまり木材と呼んでいるが)でのパフォーマンスはずば抜けていて、それを見て以来, 彼がポールの“最もうまいと思われるサーファーのリストのベスト2“に入る事になったのも納得できる。
また、彼は乗るボード、波のサイズや質に合わせたターンやフローが自然に出来る事が素晴らしいと言う。
小さい波でジョエル・チューダーの様にフローしたかと思えば、ハワイのオフザウォールでサニー・ガルシアの様な太いトラックを刻む事が、いとも簡単に出来るサーファーはそう沢山居ない筈だ。
(因みにジョエル・チューダーはナット・ヤングの大ファンで、若い時から定期的にナットの家を訪れ、一緒にサーフして来ている。つまり、ブライスとは子供の時からの遊び仲間でもある。)
ナット・ヤングはオーストラリアのサーフィングの歴史において、最も影響力のあるサーファーと称されており、その息子であるブライスが彼の才能を引き継いでいる事は疑う余地も無い。
ナットがムーブメントそのものであった様に、ブライスがこれから彼の存在にひけを取るとも劣ら無いサーファーになる可能性を持っている事は否めない。
偉大な父、未だにスケートボードの“得意”な母、二人の姉と一人の兄に囲まれ、オーストラリアのアンゴリーとアメリカのアイダホをベースとして育った彼は、毎年恒例の様に行われる家族でのサーフトリップで、世界中の様々なポイントをサーフしてきた。
さらに4歳で父のロングボードのノーズから“リタイア”し、スラスターやフィッシュを乗って来た。
乗るボードが何であれ、彼のサーフィンのパフォーマンスは超一流と言え、ブライス自身、何に乗るのも、どんなポイントで、どんな波に乗るのも“単純にサーフィンを楽しんでいるだけ“の事なのだ。
もちろん、彼もトライフィンでの競技サーフィンを十分に経験して来たし、それなりの結果も残して来ている。
しかし、数年前のコンテストで優勝して以来、競技は自分には合わないと結論を出した様だ。
アイロニーなのは、彼がアンゴリーで波のチェックに使っているバイクは、最後に出て(優勝した試合で)得た商品だという事だ。
試合で競い合って手に入れたバイクが、彼のフリーサーフィンのために日常的に使用されている、というのはちょっと面白いではないか。
数年前に自分でもシェープを始めた。これはロンボク島で出会ったカリフォルニアのサーファー、ライアン・バーチの影響によるものらしい。
大きなうねりを追ってブライスがバイクでデザートポイントに辿り着いた時、セットの波にテイクオフし、素晴らしいラインを描いて居たライアンのサーフィンに感動し、彼をアンゴリーの自宅に招いた事が始まりだ。
そしてこの二人は今では大親友になった。
世界中を旅しながらシェイプをしてきたライアンは、ヤングファミリーの家に長期滞在をする事になり、現在でも彼が傾倒している非対称ボードのデザインを始めた。
このデザインはブライスの今のクィーバーの重要なデザインの一つとなっている。(最近は、ナット・ヤングもこの非対称ボードが大のお気に入りだそうだ。ナットは有名な Evolution というモデルで、それまでのロングボード サーフィンの常識を覆した人物であり、ほぼ40年後の今、新しいコンセプトである非対称ボードでのサーフィンを気に入っている事は興味深い。)
彼のガレージには様々なボードが乱雑に置かれている。それには古いもの、新しいもの(古いモデルのレプリカや本当のビンテージ)トライフィン、シングルフィンやフィッシュ、そして非対称ボードにアライア、ロングにミッドレングスとその種類には驚かされる。
そして彼のセッションにはかならずこれらのボードのうち2種類のボードが登場する事になる。ビーチには最低でも2本のボードを持って行き、両方乗るのが通常なのだ。
なぜ、これだけ異なるタイプのボードに乗るの?
「あいつは”他のサーファーと違う”と見られたいから乗ってる訳じゃないんだよ。サーフボードには沢山の種類があるから、色々なタイプのボードを使用して波に新しいラインを描き付けて行く事で、色々な意味のストークを得られる事が楽しいんだ。」
「それに生まれた時から家には色々なタイプのボードが何十本ってあったから、いつも違うボードに乗る事はごく自然の事なんだ。これはヤング家の一員として生まれた事のプライオリティーなんだろうね。親父には感謝してるよ。」
ナット・ヤングの息子という事のプレッシャーは無いの?
「あんまり考えた事は無いよ。最初のころ試合に出る事が当たり前の様な感じだったのは、もしかしたらそうだったのかもしれないけど、グロム、ジュニアの間はみんなそうだろ? 親父の事については、ただただ、彼のやって来た事、そして今だにやり続けている事からインスピレーションを受け続けていると思う。」
「彼はもう68歳だけど、40年前と同じ様にサーフし、サーフボードの事を考え続けているんだからね。お母さんだってそうさ、今だに一緒にスケートパークに行くよ。親父がスケートのビデオを撮りに行って、そこでスケートしてたのが母さんだったんだ。彼らの出会いはスケートだし、今だにやってる。スケートもスノーボードもやるけど、これはみんなサーフィンから始まってるから、ルーツは同じなんだよ。そういう全部のアクティビティーを生まれた時から今まで、ずっとやって来てるし、これからも。親父はそのインスピレーションさ。」
今はどこで過ごす事が多いのだろうか?
「ここ数年はウィンターセッションなんだよ。カリフォルニアとオーストラリアをベースにしてるけど、どちらも冬の間に過ごす事が多い。冬の方が波が良いみたいなんだ。特にカリフォルニアのリンコンは今一番気に行ってるとこで、素晴らしい波だと思う。」
「仕事でトリップに行くところは夏が多いから、それで夏を補充してる。笑 カリフォルニアにはライアン・バーチやデリック・ディズニーっなど仲の良い友達が居て、今は彼らと一緒にサーフしたり、ボードを作る事がとても楽しい。彼らもオーストラリアにはちょくちょく来るから、いつも一緒みたいな感じだね。」
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■ VISSLA「ヴィスラ」
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