【VISSLA注目のクリエイター#4】ドナルド・ブリンク
南アフリカという国は日本から随分遠く、多分ほとんどのサーファーが訪れた事のない国ではないだろうか。
J-Bayというポイントの名前は聞いた事があっても、どんなサーファーが居て、どんな波が割れているのか、ほとんど知らないと思う。
でも、こんな名前を聞いたらちょっと興味が出てくるだろう。ショーン・トムソン、マーティン・ポッター、ジョーディー・スミス、それにブレンダン・ギイボンズ。
彼らのサーフィンの過激さから考えて、このサーファー達がどれだけ良い波、パワフルな波に乗って育ってきたのか、という事は想像がつくのではないだろうか。
アメリカ、ヨーロッパに続いてサーフィンの歴史の長いこの国は、素晴らしい波があり、沢山の素晴らしいサーファー達を育てた。それと同時に、沢山の素晴らしいシェイパーが居る事も事実だ。
正直、日本からあまりにも遠い為ピンと来ないが、一度、旅のプランを練ってみるのも悪くないだろう。
ドナルド曰く「ハワイが冷たい水になったバージョンだ。」という事なので、日本製のウェットさえ持って行けば、空いたポイントで素晴らしい波に遭遇する事ができる場所なのだ。
多くのサーファーやシェイパー達の中には、アメリカに移住しているメンバーも多い。
アメリカの西海岸のサーフカルチャーは移住組に寛容だし、不思議な事に南アフリカのサーファー達はビジネスに長けている人が多く、オレンジカウンティーの南側、ラグーナビーチにはそういうメンバー達のコミュニティがあるくらいなのだ。
ドナルドはサンクレメンテに住んでいる。彼はビジネスを求めてカリフォルニアに住んでいる訳では無いが、もともと身を置いていた音楽の世界でアメリカに来て、出会った彼女がサンクレメンテだったそうだ。
今では結婚し、二人の子供とリラックスしたサンクレメンテの生活をエンジョイしている。
彼は、子供の頃からケープタウンの近くのビーチタウンでサーフィンをして育った。
その頃には既にボードビルダーとしての基礎を固めて居たが、今でもシェイプルームを持つダナポイントでテリー・マーティンのもとでシェイプを始めた事が、今の彼のシェイパーとしてのベースを作っている。
また最近、ブレンダン ギボンズの乗るボードとして人気を集めているDVG Shapes のデビッド バン ギンケルは、南アフリカで彼がシェイプをスタートするきっかけを作ったシェイパーだそうだ。
彼はとても器用で、なんでも自分で考え、ゼロからものを作り出してしまうタイプ。
シェイプからグラス、ウッドフィンからカーボンファイバーまで、ボードデザインに必要だと思える素材なら何でも取り入れて加工し、美しいサーフボードを作り出す。
影響を受けたシェイパーは沢山居るけれど、誰かの下でシェイプを習った事は無い。その為か自分で考え、方法を模索し、作り上げる能力を研ぎ澄ます事になったのかもしれない。シェイパーというよりはアーティストの感性に近いものを感じる。
彼からこんな言葉を聞いた事がある。
「アートっていうのはそれがどう見えるかという事よりも、それを見たあなたがどう感じるかが大事。サーフボードなら見た目よりも乗り心地の方が大事なのと同じだよ」
だからという訳では無いだろうが、彼のサーフボードは決して他のボードビルダーのそれと比較しにくいものだ。
この数年彼が傾倒しているのが非対称ボードのデザインである事もこれに拍車をかけているのかもしれない。
初めて非対称ボードを削ったのは?
10年くらい前、2006年だったかな。小さいシングルフィンで、デッキにも特殊な加工をした綺麗なフォイルのボードだったよ。
どの様な経緯で非対称ボードを作る事になったの?
JBayにロビン・フレッチャー・エバンスという素晴らしいシェイパーが居るんだけど。
彼がある素晴らしいサーファーの為にアシメトリカルを削ったのを覚えてる。綺麗なボードだったよ。でも、それに影響されたという訳じゃない。
その次は単純に、当時乗ってたトラックの後ろの座席になんとか積みこむ為、非対称にせざるを得なかった僕のボード。(笑)
波のレギュラーオンリーのポイントブレイクだったから、問題は無かったのさ。非対称にのめり込んでからは、嫌になる程いろいろ考えてきてるし、今でも結論は出し切れてない訳だけど、一つだけ言える事はサーフボードやサーフィンはみんな同じものである必要はない、って事。
波へのアプローチも違えば、サーファー個人の求めるサーフィンも色々ある。だから当然決まり切った金太郎アメ(英語ではクッキー カッター)である必要は無いんだよ。
フィンを取ってみたり、左右に大きさの違うフィンを付けるだけでもびっくりするくらいの違いを感じる事が出来る。それにロッカーをねじったり、レールを変えたり、テールの形を非対称にしたらどれだけ違うサーフィンへのアプローチが出来るか、ちょっと想像してごらんよ?
廃材になる様なクレートからもボードを作る事が出来る?
水に浮くものなら何でもサーフボードの材料になるよ。(笑)
何年か前に確かにクレートをばらして、ボードを作った事がある。あるブランドがスタートして、そのブランドの一番最初の商品が届いた時に使われたクレートを使ったんだ。
捨ててしまうのはもったいないし、良い記念になると思ってさ。確かに最初は大変だ、本当に出来るのか、って思った。
でもクレートをばらし、丁寧に1枚ずつの板から釘を抜き、表面を削ってグルーで接着、それからシェイプをする頃には良いバルサのブランクスを削ってるのとあまり違わないくらいに感じた。まあまあのボードが出来たと思う。出来上がった時は結構感動したよ。(笑)
非対称ボードに乗るのに大事な事は?
あまり考えすぎない事。でもサイエンスや理論は大事。一応なんでそうなってるのかは理解しデザインして、波と自分の役割を考えてみる事は大事かもね。
でも基本はエンジョイし、トライしてみる事だと思うよ。
ドナルドが廃材からサーフボードを創り出す必見の映像です。
Story Board from Matt Gahan on Vimeo.
■ VISSLA「ヴィスラ」
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