須田那月 独占インタビュー
— 昨シーズンはJPSA ランキングが11 位、WSL ワールドランキングが50 位という結果でした。
自分への評価と反省点。また、今シーズンに向けて新たに取り組み始めたことがあれば、教え
てください。
natsuki:コンペティターを始めて4 年ぐらいですけど、高校一年生の時にJPSA のプロ資格もすぐ取れ
て、その後のNSA 全日本でも優勝して。コンペティションをスタートした最初の頃は、トント
ン拍子で来たことで「自分だったら優勝できる」、「国内なら絶対にグランドチャンピオンを獲
れる」とか。自分に変な自信、プライドが大きな弊害となっていたことに、今さらながら気付
きました。
いつも謙虚でいようと思っているんですけど、そういう過去のプライドに引っ張られている
自分がいたんです。試合が終わった後の反省も「自分はもっとできるはずだ」「優勝できる試合
なのに負けちゃって、ショック!」とか。そういう風にばかり考え過ぎちゃって。そういうのが
メンタルの崩れの原因の一つだって、昨年、やっと分かったんです。
— それでどうしようと思ったのですか?
natsuki:今年に入ってからは、まずは考え方を変えようと思って。自分がサーフィンを始めたころを
思い出すようにしました。「初心に戻る」です。でも、簡単に「初心に戻る」と良く言いますけ
ど、実際は難しいじゃないですか。どう戻るんだろう?って。
私も20 歳になって、ベテランじゃないですけど、年齢的には上の層じゃないですか。試合で
は相手が私より年上だったり、同世代だったり、下の世代とか。サーフィン界も今、小さい子
がどんどん増えて来て、上手くなっていて。だから、相手が誰であれ、いつもチャレンジャー
の気持ちで戦おうって思うようにしたんです。ゼロから始めるではないですけど、始めた頃を
思い出して、「挑戦」する気持ちを忘れずに試合に臨もうと考えました。
— では、改めてチャレンジャーだという気持ちで臨んだ今シーズン。オーストラリアの初戦か
ら、今回の日本の試合で何か変わりましたか?
natsuki:オーストラリアでは、あまり成績は良くなかったんですけど、でも、日本に帰って来てから
はサーフィンの調子が良くなってきて。千葉のQS の試合も一日3 ラウンドこなしたんですけど、
集中力も切れずに、点数もそこそこ出せて勝ち上がって行けました。そういう考え方、気持ち
が自分の中でブレずにあったからこそ、できたんだと思っています。
ただ、最初からそういうメンタルを常に持ち続けるのは、やはりちょっと難しくて。すぐに
結果が出るという事はないですから。だけど、試合をこなしていくごとに、徐々に良くなって
いくかなって信じています。
— 昔の自分に戻るわけではなくて、メンタルとして強い自分でいられるようにしようと?
natsuki:そうですね。今まで試合に向けて、いつも不安で。だから「私は勝てる、私は勝てる」と心
で唱えて、奮い立たせていました。でも、それは自分の中に溜め込むことになるので、結局、
苦しくなってしまって。
今は思ったことを全部口に出して、できるだけ一人で溜め込まないようにしています。応援
してくれる家族だとか、親しい身内とかに全部口に出して、吐き出して。不安とか、緊張して
いるとか。いつも一人で考え過ぎると、回りに言われていましたから。今はみんなにサポート
してもらっているので、そういうメンタルも徐々に良くなってきています。だから、これから
のコンペが楽しみです。
– 試合に向けてとか、もしくは普段から心掛けていることはありますか?
natsuki:試合前で言えば、いろいろルーティーンとか決めたりする人とかいるみたいですけど、私は
特にそういうのは無くて。試合前に音楽もあまり聞かないですし、自分で静かに集中するタイ
プですね。
試合期間中はヨガとか、軽い体幹とか。自分的にはそれがリズムになっていて、身体が疲れ
なくってイイです。レイデイ(波とかが小さく、試合が開催されない)が長く続くようなこと
があれば、軽く走ったりもしています。いつもヨガから海に行って、アップしてサーフィンの
練習。これを繰り返しています。
サーフィンの調子崩れたりする時というのは、試合が無い時に布団でだらだらして携帯いじ
っていたり、テレビとかと見ていて昼寝しちゃったりとか。試合って元々疲れるものだからっ
て、リラックスを口実にこういうことをすると、逆に疲れてしまうんですよね。それに気付い
てからは、なるべくいつも通りの普段の生活を心掛けています。
– 今年、国内のJPSA の予定はどうですか?
natsuki:JPSA はタイミング合うところに出るつもりです。今年は海外メインなので、2-3 戦ぐらいし
か出られないですけど。いつもライブで応援してくれる方々やスポンサーに直接見てもらえる
のが日本の試合の時なので、そこは頑張りたいと思っています。
– サーフィン以外に好きなこと、興味のある事はありますか?
natsuki:今はテニス観戦。錦織圭選手の試合を良く見ます。テレビで世界バレーもやっていたじゃな
いですか。ずーっと見ちゃいますね。特に細かいところ。「何を飲んでいるのかな」「休憩時間
に何を食べているんだろう」とか。何気ない動作を見ちゃったりしています。
本を読むのも好きですね。ノンジャンルで、何でも読みます。それこそ、今は錦織圭選手の
本を読んでいます。音楽はブラックミュージック系。あとジャパニーズヒップホップも良く選
んでいます。試合の無い時とか、普段リラックスする時に聞きます。MC バトル、ラップ選手権
とかも好きですね。
– さて、サーフィンがオリンピックに採用される可能性が高くなりましたが、自身はどう思っ
ていますか?
natsuki:オリンピックに決まってくれたら、すごく嬉しいです。自分は24,5 歳ですけど、もし、選ん
でもらえたら、ぜひ出たいと思っています。だけど、やはり自分が目指しているのは、WSL の
CT の舞台。今はQS に集中して、世界ランキングを少しでも上げていきたいです。
– 今年の目標を聞かせてください。
natsuki:昨年のWSL ワールドランキングが50 位(3120 ポイント)だったので、それよりは上に行きた
いです。シードを取るためにも、少しでもランキングを上げるのが目標ですね。昨年のポイン
トの内訳を見た時に、今まで1000 以上のポイントが無くて。一回の試合で大体、700 とか650
ポイントとか。トップシードに勝つラウンドまで行かないと、1000 ポイント以上はもらえない
ので、そこをクリアすることがまずは課題です。
— 最後にサーフィンはどんなスポーツですか?
natsuki:サーフィンはボードに乗って、水の上を滑るスポーツ。フワフワ、浮遊感。日常生活では考
えられない感覚を味わえます。最初、立つのは難しいし、パドルもキツいと思うんですけど、
横に滑れた時の感動、気持ち良さとかは一生忘れないのではないかと思います。
それにサーフィンをやり始めると自然に対してすごく感動しやすくなるというか、自然の大
切さとか、この地球というのがあって、私たちが生活しているというのをすごく敏感に感じる
ようになります。あとサーフィンしているだけ、サーファーというだけで仲良く友達なれちゃ
うことですね。ぜひ、みんなも挑戦してみてください!
Interview&Photo/S.Yamamoto