小林直海インタビュー
Photo:S.Yamamoto
-今シーズンも終了。JPSAは13位から12位にアップしました。今年の一年を振り返ってどんな年でしたか?
N:そうですね。何か手応え的なものは昨年よりは少しだけありました。ラウンド4からのスタートなんですけど、1コケが減ったこと。去年はそこまで実力が出し切れなかったんですけど、それに比べたら、今年は自分の攻めるサーフィンができたのかなって。
それが評価された時はラウンドアップすることができたので、ランキングは1個しか上がらなかったんですけど、手応えとういうか自信にはなりました。
Photo:S.Yamamoto
-昨年から変えたことはあるのですか?ラウンド4での1コケが無くなった理由は、何だと思っていますか?
N:今までは会場のピリピリした雰囲気で波乗りするのが、あまり好きじゃなかったんですね。試合を勝ち上がっている選手と同じに、一緒にこう波乗りとか、ガツガツ練習するっていうのは好きじゃなくて。いつも練習しているから、そんなに波を見ないで試合に臨むという時が多かったんです。だけど、シードでラウンド4からだと下から上がってくる選手より身体の対応とか、波の対応とかが弱いから、その分、たくさんサーフィンしようと思って。
今年はまず波に乗ること。あとは波を良く見たりすることを増やしました。だから、会場とかその横とかで良く練習していましたね。波はもちろん仲間の応援とかもしながら人の試合も見たり、なるべく会場にいるようにしました。それで、あそこで待とうとか、作戦を立てたりしたことが良かったんだと思います。
あとは茨城の大会の時にビデオカメラを買って、それで先輩の海沙君(河村海沙プロ)とかと撮りあったりしたのも、自分の中ではすごい勉強になりました。自分ではあまり調子良くないと思っていた板が「思ったよりイイな。スプレー出てるな。」「この板は、こんな感じだったのか。」っていうのがけっこうあって。自分の乗っている感じと、見た目と全然違ったことを、客観的に見ることができたことが大きく変わったことですね。
Photo:S.Yamamoto
-自分の感覚、乗り具合の感覚と見た目にけっこうギャップがあったんですか?
N:そうですね。それに気付いたのが、夏ぐらいなんですけど。サーフボードをちょっと迷っていて、どのボードをチョイスしようって。ライディングも映像を見たりして、いろいろ感想も聞いたりして。
仙台に海人君(大橋海人プロ)とカラーズマガジンのヨゲさんと行ったんですけど、実際にアドバイスもらって。で、そういう実力のある人からアドバイスもらえると、納得できるので自信にもなりました。
-試合への臨み方だけでなく、板のポテンシャルを理解して、自分を客観的に見ることができるようになったことが大きな成果なんですね。
N:去年は良い流れが全然なくて。ダメな時にダメなまま次の試合に行くという繰り返しでした。でもいろいろ改善したことで、今年は気付くことがたくさんありました。
波にフィットさせていくという能力を身につけると、良いパフォーマンスができるとわかりましたから。アベレージからグッドスコアを前半に1本出して、すぐにバックアッップをまとめて、勝ち上がるということができたヒートもいくつかあって。今年は8戦中、5回ラウンドアップ。伊豆はセミファイナルまで行けて。でも、セミファイナルは4番負けで7位。それが最高位のリザルトでした。
ただ、自分の最初のヒートを勝ち上がって、次のラウンド5かクォーターファイナルに行くんですけど、4番負けが多くて。大抵負ける時は波に乗れなくてとか、あと1本バックアッップが足りないとか、フィニッシュにコケるとか、そういう超もったいない負け方が結構多かったんですね。
ランキングとかになってくると、そういう細かい差でシードに残れる、残れないかとか。トップ10に入れるとか。ここでひっくり返していたら、もっと上に行けただろうなって、実感した年でもありました。だから、少し変えるだけでも何か変わるだろうと漠然ですけど。1年を通して、ずーっとそのことを考えていました。
-さらに上を目指すためには何が必要か。来シーズンは海外はとかは考えていないのですか?
N:今の状況だとけっこう厳しいですね。海人君にも「一緒にブラジル行こうよとか。」誘ってもらったりしているんですけど、金銭的な問題もあるので。
でも、タイミングで行ってみたいところだったり、前向きには考えていて。それで得るものもたくさんあるし。自分は勝ち負けというよりも、試合に出ることでサーフィンが上手くなるって思っているので、なるべく出たいと思っています。
準備して行って、泊まって、試合して、家まで帰るという一連の旅の流れみたいな中で、サーフィンのコンペという生活で得るものは、大きいかなって思います。今、楽しいと思える時もあるし、やはり、期待してもらっている人達もいるので、頑張らないといけないなって。
-楽しいと思える時って言い方をしましたが、辛いこともあるのですか?
N:ぜんぜんありますね。いや、けっこう正直、いつも辛いです。その本心を言うのは、なんかスポンサーの人とかに申し訳ないなって思って、あまり言わないようにしているんですけど。自分のサーフィンの表現の仕方をコンペだけに収めたくないというのが、すごく強くて。
やはりコンペという勝つためにしなきゃけないこと。動きだったり、乗り方だったりとか、流すこともあったり、その葛藤が試合前の練習もそうだし、試合中もバリバリあるんですよね。試合が近づいてくると、やばい!って思って、試合モードのサーフィンをしなきゃって。そうしている自分がいます。コンペ自体を楽しめればいいんですけど、自分のやりたいサーフィンはこうじゃないと思う時があります。
でも、基本的には自分のサーフィンスタイルは変えるつもりは無く、勝つための試合運びだったり、ここで安定のリップ、ターンとかを繰り返すというのは試合だからこそだし、試合はそういうものだと思っているので。出るからには勝ちたいし、ここで勝った時に何か得るかもしれないって。その先のビジョンとかを考えた時に必要なことだと思って、試合に出ています。
-自分の求めている「スタイル」って何ですか?
N:そうですね。やはりその何だろうな。海外の選手とか、今、イケイケな注目浴びているフリーサーファーとかにすごい興味があって。やはり、映像とか写真も格好良くて、自分もそういう風になれたらなと良く思ったりするんですけど。
「こいつ、このサーフィンで試合に出るんだ。」みたいな。その意外性があるっていうか、そう思ってもらえたらいいなって思います。
でも、そういう人たちもそうなる前は、コンペに出ていて結果も残したりしてるじゃないですか。だから、今はそういう時期だと思っていて。そのコンテストで行けるとこまで行って、自分の名前とか知ってもらって。
今、21歳なので25歳まではコンペに出たいなと考えています。出ながら、他に何を残せるかとか、そういうことを考えていますけど。それで、コンペに出なくなった時が、本当の勝負だと考えています。
Photo:S.Yamamoto
-影響を受けた人っているのですか?
N:ディラン・リーダー(1988−2016)というスケートボーダーなんですけど、最近、白血病で死んじゃって。28歳で。その生き様、プラス半端じゃないルックスの持ち主で。高身長でスラッとしていて、スマートなスケーター。初めて見た時はマジで衝撃でした。超格好良いんですよ。そいつが小さい時はクイックシルバーで、その後、グラビス、アナログにサポートされて。もちろんメインライダーです。その時に当時のグラビスからシグネチャーのシューズが出たんですけど、スケートができる革靴のドレスシューズって、すごくないですか?
実はこれもそうなんですけど、HUFというブランドで。今、アンバサダーのつながりで履かせてもらっているんですけど、このHUFから出たシグネーチャーがこのスリッポン。もうスタイル出まくり。当時から映像もガンガン出ていて、シュプリームからも代表的な映像も出ていました。
彼がグレッグ・アンダーソン、デーン・レイノルズとかと一緒に旅している映像もあって、それもすごくクールで、一緒にサーフィンしたりという映像なんですけど。それで自分も相当な影響を受けていますね。だから、自分もスケーターの友達とかも多くいるので、波の無い時はストリートのスケートとか、パークとか行って、ランプじゃないですけど滑ったりしています。
サーファーで言えば、断然、ウォーレン・スミスですね。ルックスが最高。サーフィンは自分と真逆なんですけど、生き方がオリジナルで。カメラもやっていて。やはりスタイルがあるというか。自分は人と違うスタイルにこだわりがあって、彼らみたいな生き方に憧れます。でも、真似するのではなく、自分のオリジナルスタイルが出せていけたら良いなといつも考えています。
-原点はそこなんですね。では、コンペを極めた先にあるゴールって何ですか?
N:うーん。まだぼんやりでしかないです。なんかすぐ胸を張って言えるほどではないんですけど、ブランドとか、そういう何か自分が好きなものだったりを発信できたらなとは考えています。自分のサーフィンというフィルターを通して、音楽、写真だったり、ファツション、デザインだったりという部分に繋げられたらいいなって。
そう、日本のスケート雑誌「オーリー」を読んだんですけど、すごい痛感したんですよね。内容はシュプリームの広告塔、ジェイソン・ディルのインタビューなんですけど、「俺らが若手をプロに押し上げる。」みたいな話が載っていて。
「DVDのエンドロールは若手が一番上に名前があって、俺らは一番下なんだ。」って。実際、ショーン・パブロ、ナケル・スミス、ルーカス・ヴェルチェッティが注目を浴びたのもジェイソンのおかげと言われています。
それがすごい格好良いなと思ったんですよ。若い世代を育てるって、プロ活動しながらって、これもスタイルじゃないですか。日本ってそういうのが、あまり無いかなと思って。それで自分のやっていることが大きくなった時に、格好良い若手とかをフォローして、その子たちを本当のプロにして押し上げたいって。
それをやるまでには相当な時間もかかるし、簡単にできるって思っていないですけど、本当に希望っていうか、それをできる自分になれたら最高だなって思っています。
-フリーサーファーを目指すからこそ、今、コンペに集中する。試合に出ることで上手くなる、学ぶことがたくさんあると言いました。25歳ぐらいまでと期限を決めたならば、もっと今、コンペに集中すればという考え方もあるのでは?
N:それだと自分は潰れちゃいそうな気がします。自分がいろんなことを知らなすぎたから、いろんなものを経験していってやっていくことが大切と今は思ってて。コンペで燃え尽きるつもりはまったくありませんし。
例えば、試合以外のことですけど。自分のスポンサーのゼブラサーフボードの営業とか、そういう場面でお客さんと触れ合うこともすごく楽しいし。サポートしてもらっているからこそ、貢献じゃないですけど、ちょっとでも返せたらと思うし、みんなに自分を知ってもらえるチャンスだなって。
試合が無い時とか、自分がこの大会はどうしようかなと迷っている時に、そういう話があるなら行ってみる。新しいことで自分がどう反応するかも知りたいし、自分の可能性をもっと広げるには、いろんなことを経験しなくてはいけないなって思うんです。
だから、バランスよくやっていく。コンペが二の次ではないですけど。コンペで世界に名を上げていくというのが目標でもゴールでもなく、コンテストに出なくなった時こそ、本当の勝負だと思っているので。今はいろいろな刺激をもらって、自分のものにしていきたいと思っています。
サーフィンだけでなく、そのフィルターを通して、写真やデザインなど自分を表現すること。それをどう表現するかにこだわりたいんです。だから、コンペも頑張るし、それ以外のこともいろいろやってみたい。コンペを辞めた時に、これっていうものが胸張って出せるように、今は自分を磨いていきたいです。
-ありがとうございました!
Photo:S.Yamamoto
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
小林直海
生年月日: 1995 年 7 月 11 日生 21歳
スポンサー:ZBURH SURFBOARDS, SYNDICATE, NAMIARU?, FITSYSTEMS WETSUITS, CAPTAIN FIN,MONSTER MASH, BRISA MARINA, セイワ輸送, ACF_
Interview&Photo:S.Yamamoto