Update:201705.09TueCategory : Namiaru? News

松下諒大プロインタビュー

NAMIARU? SHRED CREW 松下諒大。
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コンペが大好きと語っていた諒大が昨年、大会から離れ単身渡豪した。そして、今シーズンから再びコンペに参戦すると言う。日本を離れて何を考え、何を得たのか。諒大に話を聞いた。

NAMIARU?(以下N):日本での活動を止めて、オーストラリアに行こうと思ったのはなぜですか?

RYOTA(以下R):「2014年に大きな試合で優勝して、当時のASP JAPAN(現WSL JAPAN)ランキングで1位になれて。成績は残したんですけど、次の年は全体的に考えたら、特に大きな成績とかは出せなかったんですよね。それで今の状態で日本にいても試合に勝っていけるのかと考えた時に、何かが足りない。
自分自身がすべての面で遅れているというのも気付いていたので、それを変えるために環境を変えたらどうかって考えて。ならば、いっその事、一からやり直してみようと思ったからです。」

N:なぜオーストラリアだったんですか?

R:「ワーホリ(ワーキングホリデー)があったことと、スポンサー(DOVE)の紹介があって。トムさんという、キラの山の方に住んでいる人がいるんですけど、その人の家に世話になることができたので。
でも、ずーっとオーストラリアというわけでなく、年末はハワイへ行きました。ハワイのシーズンはもう絶対なので。プロサーファーとして、ここは避けてはいけない場所ですから。でも、ノースが終われば、オーストラリアに戻ってという生活でした。」

N:向こうでの生活はどんな感じだったんですか?

R:「2016年のJPSAのバリと伊豆白浜の大会に出て、7/9に出発しました。向こうではワーホリを使って、ジャパニーズレストランに勤めました。クーランガッタにある「トップヌードル」というお店なんですけど、そこの厨房にお世話になりました。
働いたお金は家賃と生活費に使って、自分のスポンサーからの給料は貯金に回して、次の年のQSの遠征費にしようと考えていました。
オーナーの人がすごく良い人で。自分が何のために来たのかを理解してくれて、シフトも自由にしてくれました。だから、休みの日も選べましたし、サーフィンの練習も十分できる環境でした。」

N:オーストラリアでサーフィンをするようになって、何か変わりましたか?

R:「オーストラリアではコーチングも受けました。ボトル(ジェイ・トンプソン)のところです。具体的に自分に足りないものとか、ビデオで撮りながらのスキルアップとか、そういうものを教えてもらいました。
特にバックサイドのサーフィンがすごい変わりましたね。今まで引っかかったりとか、上手く乗れないこととかあって。どうやって乗っていいかもわからなくて、波任せで。悩むことが多かったんですけど、むしろ逆に今は得意になりました。
体の使い方とか、乗りながら自分に余裕ができるようになりました。本当に自信がつきました。そこは自分で成長できた一つかなって。もう自分の武器になりましたね。」
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N:オーストラリアと日本の環境で何か違うところってありますか?

R:「海に入っているメンバーがすごいハングリーで。上手い人がいくらでも入っているんですよ。負けたくないから、こっちもどんどん頑張って波に乗って。で、最後は仲良くなって、認められるようになりました。
そこで思ったのは上手い人といたら、いくらでも上手くなれるんじゃないかなって。自分が一番上に立っちゃうとそれより先が見えなくなっちゃうんじゃないですか。だから、本当に上手い人がいるところでサーフィンをするというが、すごい大事なことだと思いました。
例えば、ライン取り。日本人にはないライン取りを眼の前で見れたり出来るから、普通に海に入っているだけで学ぶことがいっぱいあって、すごい面白いんです。最近はそのおかげか、DVDとかも良く見ていて。特にデーン・レイノルズとウィルコ(マット・ウィルキンソン)のサーフィンを検索で探しては、保存してチェックしています。」
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N:さて、オフの間にどれだけやって来たか。その成果が問われるのが初戦だと前に言っていましたが、JPSAの初戦、バリがまさかの一コケ。R-2の敗退という結果はどう受け止めていますか?

R:「うーん。こちらに来て、ストレッチや風呂にお湯を貯めて、体を温めてから海に行くという自分なりのルーティンを作っていました。体調管理はしっかりやってきたつもりだったんですが、試合の朝、おかしいなって。
体が重いなと思ったんですけど、アドレナリンが出ているのか、ハイになっていて。それまでの練習でもすごい調子が良くて気合いも入っているから、全然イケるみたいな感じでいて。自分の体の異変に気付けませんでした。

試合が終わった後に倒れちゃって。あー、俺、何をやっているんだろうって思いましたね。今まで長い間、サーフィンをやってきた中で、今回が一番悔しかったです。本当はもっとできるのにというのがすごいあったので。」

N:自分の弱点。メンタル、マインドの問題ですか?

R:「そう、これは課題なんです。応援してくてる人がいて、そういう人たちに自分の新しいサーフィンを魅せたいという気持ちが強すぎてしまったのかもしれません。 何でもポジティブに考えるようにしていたんですけど。
試合では冷静に運ぶと冷静になりすぎちゃって。でも、何かムキになるとムキになりすぎちゃうみたいな。そのコントロールがすごく難しくて。試合で自分の心をどれだけうまくコントロールできるか、自分の体の声に耳を傾けられるか、これが大切だって改めて実感しました。
実際、体が赤信号を出しているのに、それに気付けなかった。いや、気付いていたのに、それを流してしまった。まだまだですね。でも、これも自分にとって良い経験になったので、次からは気をつけたいと思っています。」
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N:今シーズンの目標を教えてください。

R:「QS回りながら、日本のJPSAも出ます。出られる試合には積極的に出ていけたらなって思っています。QSのハイグレードの大会はポイントも必要だし、QSの大会自体も重なることもあるので、上手く調整してトライしていきたいと思います。
今年は本当に結果を残したいと思っていて。そう簡単なものではないですけど、自分が今やろうとしていることに、ちゃんと答えを出したいと思っています。
それに自分の成長をどれだけ試合で出せるかが、すごい楽しみというのもあります。『楽しみながら』をキーワードに、これを忘れずに一年やっていきたいと思っています。」
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松下諒大。
「今が一番楽しいです。」
これが諒大がインタビューで最初に語ったこと。
環境を変えることは、そう簡単なことではない。
今の自分取り巻く全て、持っているものを捨てることにつながるからだ。
それに変えたところで、何の保証もない。
それでも自分を変えるために、海外へ。
自分の想いを貫き通すための決断。
それはプロとして今、やりたいことがわかったから。
そして、それが面白いと思えて、さらに自分が成長できるから。
「これからは自分の素を出していく」とも言う。
今の自分と向き合い、構えないから言える言葉。
自分は自分。
人は人。
だからこそ、常にオープンマインドでいようと。
「こうあるべき」という言葉の呪縛が解け、自分のやり方を見つけた。
諒大ならやれる!
Go!Ryota!

Photo/Text:S.Yamamoto