台風と波
10月に入り全国的に物足りない波となる日も出てきましたが、今年は梅雨が短く、早い夏の始まりと共に台風の恩恵もあり、なみある日々が続きました。
台風の接近数が例年に比べ多く(過去30年平均11.5個、2018年は10/18現在15個)、上陸によって、波だけではなく各地で大きな被害ももたらしました。
しかし、台風はサーファーにとってビッグウェイブをもたらす貴重な存在です。
そこで、今回は台風について。
台風は海面水温が26~27℃以上の海域で発生し、28℃以上の海域で発達していきます。
◎発生
一年中暑い熱帯、北緯5度~15度付近では上昇気流が発生しやすく、この気流によって次々に発生する積乱雲(入道雲)が集まって渦を形成し、中心付近の気圧が下がって次第に熱帯低気圧が発生。そして海面水温が高い海域を進むことでさらに成長し、中心付近の風速が17m/sを超えると台風になります。
◎発達
28℃以上の海面から供給される水蒸気がエネルギーとなり、中心気圧はどんどん下がり、それに合わせて中心に付近の風速もぐんと強まります。
◎最盛期
海面水温が下がり始める海域へ到達すると中心付近の最大風速は少しずつ弱まりますが、暴風域は反対に広がることが多いです。
◎衰弱
中緯度付近の海面水温がさらに低い海域や、大陸や日本へ上陸すると海からの水蒸気の供給が減少し、熱帯低気圧や温帯低気圧の変わります。
強い風が吹き渡る距離や吹き続く時間が長いほど、風波は強まります。
台風が勢力を強め暴風域も広く進行速度は遅いほど、その付近の海域は大荒れに荒れて、波は離れた海域へ伝播していきます。
台風はグアムやサイパン近く(フィリピンの東海上)に発生することが多く、赤道貿易風に流されてゆっくりと西へ進み、そのまま大陸へ進む場合は日本へ台風スウェルがもたらされる可能性は低くなります。
徐々に北上する場合、日本の南の海上では南東風が強く吹き続くことで、まずは西~東日本を中心に南東ウネリとして反応し始めます。
そして、遥か南の海上を勢力を強めながら北西へ進むことで、波長の長いパワフルな南~南西のウネリが西日本から届き始め、次第に東海~湘南でサイズアップしていく、ということになります。
一般的に、北緯20度線を目安に台風の進路予想を見ている方は多いでしょう。
湘南から西のエリアでは、南東~南~南西ウネリとして届く多くの場合、それを目安にしておくと良いです。
また、南東の海上に台風が存在するときには、千葉以北の東向きのエリアでも台風へ吹き込む波長の長い南東ウネリが届き始めるのも北緯20度が目安で良いでしょう。
しかし、台風スウェルがもたらされるかどうかは、台風の進路だけではなく、勢力や速度などその他の要素も大きく関わります。
9月中旬の台風22号は、北緯17~18度付近の海面水温が30℃近い海域でエネルギーをたっぷりと蓄えながらゆっくりと西へ進んだため、20度よりも南に位置しながらも、湘南以西のエリアには波長の長い南西のウネリがしっかりと反応し、数日続きました。
また、反対に20度を超えたとしても勢力が弱まり、思ったほどサイズアップしない場合もあります。
さて、北日本の太平洋側や日本海側でも台風からの恩恵を受けることがあります。
これは月別の主な経路です。
東の海上を北上する進路の場合、海面水温が下がることで台風としての勢力は弱まりますが、今度は寒気を取り込むことにより温帯低気圧に変わり再発達。
南東~東~北東ウネリへシフトしながら、東~北日本の東向きのポイントでは波がしばらく続きます。
いずれにしても、台風が接近することで波長は短くなり、波数も増えて沿岸の風が強まり、オンショアの場合はコンディションを落とし、また、オフショアが強まりすぎてウネリが抑えられてしまうこともあります。
グランドスウェル(波長の長い波)は、遥か遠い海上で発達する台風や低気圧の周辺で生まれる強烈な風波が長い距離を吹走することで、沿岸に到達する頃にはしっかりとセットにまとまって届く波のこと。
離れ過ぎず近過ぎず、その目安はやはり北緯20度付近の海上に発達した台風が停滞、もしくはゆっくりと移動しているという条件がそろった時に、グランドスウェルが訪れます。
また、日本海側は台風へ吹き込む北風が吹き続くことで北ベースの波でサイズアップ。日本海へ台風が進んだ場合は北上した後も北ウネリが反応し、しばらく波が残ることもあります。
台風は反時計回りに風が吹き込んでいます。
単純に考えると、台風の北(上)側は東風、東(右)側は南風、南(下)側は西風、西(左)側は北風が吹いています。主に東側や南側は風が強く波も高いですが、中心から少し離れたところはその周辺の気圧配置などによって変わってきます。
風やウネリの予想はLOLAの予想データもぜひ参考にしてください。
風向や風速、波高だけでなく、遠く離れた台風からパワフルなウネリが届く時には波周期が高い数値に跳ね上がります。
波が上がるか、反応が弱いのか、、、特にパワフルな波は波周期を要チェック!
気象予報士
塩田久実