Update:201903.19TueCategory : Namiaru? News

【ラモン ・ ナバロ来日インタビュー】史上最大の波をメイクした秘話とチリの環境問題を語る

2018年5月にフィジー島にて史上最大の波をメイクして話題を呼んだチリ出身のビッグウェーバーRamon Navarro(ラモン・ ナバロ)。

Billabong XXL AwardsのRide of the Year Awardにノミネートされ、Big Wave World TourやEddie Aikauなど数々ビッグウェーブコンテストで好成績を残し、多くのファンを魅了している。

2019年2月、Patagonia Surf Tokyoで開催されたイベントにラモン・ ナバロが来日し、史上最大の波をメイクした時の状況や、知られざるチリでの環境活動での事を語ってくれた。

トークショーでの内容やインタビューでラモンが残した貴重なコメントを紹介したい。

自己紹介をお願いいたします。

名前はRamon Navarro(ラモン・ナバロ)で38才です。20年前からサーフィンをはじめ、ビッグウェーブを探して乗る事に熱中しています。

また漁師の息子でもあり、私の生まれ育った所は良い波がブレイクし、環境資源としても良い環境です。

サーフィンを通して世界中へ旅をする事で視野が広がり、そこでの生態系や環境の事に興味を持ちました。それが理由で、現在は財団で自分の生まれた町プンタ・デ・ロボスを守るプロジェクトをしています。

▼南米で最も一貫したファンウェーブを形成するポイント「プンタ・デ・ロボス」
https://www.namiaru.tv/misc/worldPointMap.php

South America > Chile > Central Chile

世界でも最高なビックレフトを生み出すポイント。

日本に来た目的を教えてください。

日本は、チリで生産された鮭の1番の消費国ですが、日本での鮭の流通がどのように行われているのか知るために来ました。

来日の1番の目的は、チリ国民に鮭の養殖の現実を伝え、その警鐘を鳴らすことです。

チリで盛んな鮭の養殖は、チリ南部のパタゴニア地方をすごく汚染しています。鮭の養殖産業からでるゴミが原因で、綺麗で透き通った海が汚染され、たくさんの魚が死んでいます。

日本では、築地市場やチリのサーモンを提供するレストランに行き、チリのサーモンがどこに行っているのかを学び、それを基にドキュメンタリー映画を作り影響を与えたいと思っています。

チリの養殖は、鮭に抗生物質をたくさん与えるなど環境に悪い方法で生産されていますので、是非皆さんにこういう現実を知ってもらいたいです。

チリでは鮭の養殖がとても大きなビジネスなのでこれを阻止する事は難しいですが、少しでも有害な事を消費者へ伝え、養殖産業に対して、養殖方法を変えるなど環境に配慮したやり方でビジネスを行うように圧力をかけたいです。

地球からのプレゼントである綺麗な自然を子供達に残すという事は私達の役目であり、それにより子供達が健康で元気に育ってくれればと思います。

最近の活動について教えてください。

世界中のビックウェーブに乗るための活動をし、今年もフィジーのビックウェーブを期待しています。

また環境問題に関してはチリ国内のプンタ・デ・ロボス財団の活動を続け、ここは保護区になっていて、プンタ・デ・ロボス財団のプロジェクトによりチリ内の人に環境問題への意識づけをし最終的には環境保護に関する法律が制定される事を目指しています。

Patagoniaとの関係を教えてください。

6年前からPatagoniaとの関係をスタートしました。Patagoniaはチリとアルゼンチンの共通した地名で大きな会社です。

幸運にもそこで働く人達と知り合う機会があり、チリのサーフアンバサダーに選ばれました。それからオーナーやスタッフの方々と良い関係を築く事ができました。

Patagoniaはとても環境に配慮した事業を行っていて、そこで製造されている製品も最初から最後まで環境に対して責任も持って作られていてとても素晴らしい会社です。お付き合いできてとても誇りに思っています

イベントでは、対談者としてパタゴニア サーフ・アンバサダーでプロロングボーダーの木下 デイヴィッドが加わり、ラモンのストーリーをより深く追求していった。

フィジー島で史上最大の波をメイクしたラモン・ナバロ

▼その時の映像がこちら

このクラスの波は過去10年間で2回しかブレイクしていない。1回目にブレイクした2012年は、この波に誰も乗ることができなかった。

しかし、このブレイクを見たラモンは師匠であるコール・クリステンソンと一緒に次のブレイクに向けじっくりと計画を練ってこの波に挑んだ。

2018年、フィジー島でこの波をメイクして海から上がってきたら、着信が1000件近く入っていて自分でも対処できないくらいになっていたという。

▼ラモンが乗った波がブレイクする「フィジー・タバルアアイランド」
https://www.namiaru.tv/misc/worldPointMap.php

Pacific Islands > Fiji > Fiji South

▼フィジー・タバルアアイランドの波情報
https://www.namiaru.tv/forecast/forecastWorldPoint.php

実際に乗っていたサーフボードの長さはどのくらいですか?

その時に乗ったサーフボードは5‘10です。

10年前に使って以来、ずいぶん長い間使用していなかった水上バイクで引いてもらうタイプのサーフボードです。

当時は流行になっていたのですが、最近ではウィングが主流になってきて長い間ほったらかしになっていました。しかし、2012年にあの波を見てからこのサーフボードを再び引っ張り出さないといけないんだなと思いました。そして幸運にもあの波をメイクする事ができたのです。

このボードの重さは5kgあるのですが、さらに2個の重りを加え合計で15kgでした。

すごく重たいボードですが、この重さによりスピードがつき、バンプがあっても耐えることができます。2018年にタバルアの波をメイクした時は、とてもクリーンな波でした。

今回は水上バイクで引っ張ってもらいましたが、その時にもの凄くスピードが出ても、この重さがあれば安定できました。

ジェットスキーが動き出したのはこの波のどのくらい沖ですか?

1キロメートルくらい沖だったと思います。このくらい距離があると水上バイクを運転する人の視界が良くなり、そしてドライバーが「ここから波に乗ろう」と決断しました。

あの波を捕まえるために2時間も沖の方で待っていました。本当は寒くて早く帰りたかったです。

うねりが終わりかなと思った時、ようやく波が来て挑むことができました。

その時は寒かったので、なるべく体を温める事と、スピードが早かったのでそれに負けてこけないように集中しました。

波に乗っている時はそのサイズがわからなくて、後になって写真を見てどのくらい大きな波に自分が乗ったかを実感しました。

実際にこの波を狙っている他のサーファーはいましたか?

たくさんのサーファーが待っていました。

このスペシャルな波が来るのも5〜6年ぶりで、本当に久しぶりの事でした。これは自分への贈り物で人生で一番の波に乗ったといっても過言ではありません。

あのチューブの中でフォームボールにやられる事を考えましたか?

このチューブをメイクする時、姿勢を低くして、ボードを常に下に向けて方向を変えなければなりませんでした。それがとても難しかったです。

ボードを真横に向けていると水の重さでやられていたと思います。水があまりにも上へ上へともって行こうとするんで、ノーズを岸の方に向ける事を意識しました。

この波は透明で滑らかだったのですが、乗っている時、水が透明で下が全て見えていたんです。もしここでワイプアウトすれば死ぬ事を覚悟しました。

波から出てきた後ケリー・スレーターがいて、「凄い波だったよ。」と狂ったように叫んでいた事を覚えています。

ビックウェーブに乗る時に一番気をつけている事はなんですか? またどのようなモチベーションですか?

まずは自分がどういう波を目指しているかを見極める事が重要です。人によって波の大きさの価値観は違います。

私にとって大きい波は10メートルを超えますが、1メートルでも大きいと感じる人もいると思います。

トレーニングに関してですが、週3回くらいジムに通い、天候の悪い日には週5回通っています。またダイビングや自転車に乗ったりもしています。

ビックウェーブに乗るには体を鍛える事、そして特にうまくいかない時にどう体を支えるか、コントロールできるかが重要になってきます。

またビックウェーブに乗る時は特に、難しい状況でも冷静を保てるような精神的な鍛錬が必要だと思います。とにかく落ち着いて何も考えずにいる事です。

それから波に飲まれた時、息もできないですし、そこでのコントロール方法が一番難しいです。

熱心な活動家ラモン・ナバロが成し遂げたチリの環境問題

プンタ・デ・ロボスで新たに建設されるパルプ工場が、当初は下水を引っ張ってきて汚水を海に流す事を聞いたラモン。

ここでサーフィンや漁をして育ち、この地をこよなく愛すラモンはそれを阻止するため、皆で立ち上がり、最終的には遠くから綺麗な水を引っ張ってきて途中にフィルターをつけて綺麗な水を海に流す事に成功した。

プンタ・デ・ロボスで行なった環境問題について教えてください。

私は漁師の息子として育ち、家族の皆が海に携わっているので、海や海岸に対して愛情があります。海は私にたくさんの幸せを与えてくれましたし、自分の大好きな場所の環境を守らなくてはいけないという責任を感じています。

この活動で未知な事が多かったですが、幸運にも色々なメディアからの支援を受けました。私は人から知られるようになっていましたし、だからこそメディアを通して伝えることが有効な手段だと思いました。そしてこの事が活動を成功へと導いたと思っています。

これは私1人で行なっている運動ではなく、地元の漁師や地域の方と一緒にそのパルプ会社に対して解決したもので、皆が一緒になれば大きなことを解決できるのだと実感しました。

結果的には排水工場を建設する事になりました。製紙業というのはチリの中ではとても重要で莫大なお金が動く産業でもありますので、政治的な変化も必要になってきます。しかし、プンタ・デ・ロボスでのキャンペーンはなんとか成功し多くの人に共有することできました。

このプロジェクトを行う事で、国内の海岸地域の活動に色々と顔を出す事ができるようになりました。自分の好きな場所のためにやった事ですが、今はとても大きなチームとなりこのプロジェクトを進めています。

———編集後記———

正直ラモン・ナバロという男を自分はあまりよく知らないままこのイベントに参加した。

凄まじいサーフィン映像はネットで見ていたが、イベントに参加する事でラモンがサーファーだけでなく活動家としての偉大さに改めて気付かされた。
フィジーで史上最大の波をメイクした英雄は、それだけに留まらず、その培ってきた偉業を影響力に変えて、さらに多くの人、メディアや行政を巻き込み、1つの環境問題を解決する事に成功。

そしてそれをモデルとし、今度はさらに大きな鮭の養殖産業に潜む環境問題に挑んでいる。

どんな難しい状況でも自分をコントロールし冷静さを保つ事が大事だと話していたビッグウェーバーのラモンだが、実は高所恐怖症だという意外な事実も判明。理由は高い所で自分自身がコントロールできないそうだ。あれほどのビックウェイバーが高い所が苦手だという事に驚かされた。

イベント後、木下デイヴィッドと話す機会があったのだが、久しぶりに再会したラモンが以前の険しい表情ではなく、あまり穏やかで別人になった話をしているのが印象的だった。あの波がラモンの全てを一変させたのだという。

サーファーとして、活動家として常にビックウェーブに挑み続けるラモン。これからどんな大波をメイクしてくのか楽しみだ。

Writer & Editor: So Sugaya

Ramon Navarro(ラモン・ ナバロ)

チリ出身のビッグウェーバーであるラモン・ナバロは、海で育ち、幼少の頃から漁業を営む父を手伝いながらダイビングを学んだ。巨大な波に乗ることで評判を高めた彼の才能は、世界中の無数の競技会での好成績からもうかがうことができる。熱心な活動家でもある彼は、自国の活気あふれるサーフィン環境を保護するための多数のプロジェクトに取り組んでいる。

▼『The Fisherman’s Son』クリス・マロイ著

生まれ育ったチリ、プンタ・デ・ロボスのすばらしい海岸線を救うために地球上最大のウェーブに乗る男、ラモン・アレハンドロ・ナバロ・ロハスのストーリー。是非チェックしてみて欲しい。

https://www.patagonia.jp

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