Update:201306.25TueCategory : ニュース

FASHION COLUMN #001 水に流していいこと、悪いこと

A FASHION CLOTHING LABEL WITH
MORE THAN DEVOTION TO THE OCEAN

 こんな海に対する熱烈な愛情、帰依をブランドフィロソフィーとするtwo thirdsというファッションブランドが、ヨーロッパ屈指のビーチ&サーフタウン、スペイン・バスク地方のサンセバスチャンにある。地球の2/3が海であることが、そのブランド名の由来であることからも海に対する想いがうかがえる。2009年創業、創設者のルッツ・スウィンクとセルジオ・ベンゾはもちろんサーファーで、有機的に関わる人々(クリエイター、編集者、エンジニア、ライフセイバー、学生、海洋研究者……)も、サーフィンやビーチカルチャーを媒介に繋がっている。

 ラインナップされるワードローブは、メガサーフブランドのような「ポップ」で「マス」な雰囲気とは一線を画している。どこか素朴で、ほっとできる、滋味いっぱいの日用品のようなデザインと色使いの中に、グラフィックアーティスト的なソリッドなモダンが加わる。それはまるで、かの地の文化の中心ともいえる伝統のバスク料理が、ヌーヴェルキュイジーヌの影響を受けて「ヌエバ・コシナ・バスカ」として世界の食通を驚かせたようなアプローチだ。

 そして環境に対するエシカルなアプローチが見逃せない。無塩素ウール、蜜蝋を使ったワックスジャケット、100%オーガニックコットン、市場在庫になった生地の活用……、できるかぎり地球へのダメージの少ない素材と生産背景の使用を徹底しているという。なかでも注目したい試みが、クロージングブランドで初となる「harmless dissolve」の外装袋を採用したことだ。これはデンプンを主原料とするプラスティック製品の代替素材で、有害残留物を残さず水に融解させることができるという。

 僕らがサーフィンを楽しむビーチや海面に漂流するポリエステル袋は、分解するために400年もの時間を要し、自然環境、海洋生態系に悪影響を及ぼすという報告がある。その役割を終えればすぐにゴミとなる外装袋にも気を使うブランドの姿勢に、感銘を受け、微力ながら応援したくなった。

 そんな袋に入って手元に届いた写真のTシャツは、デンマーク出身、バルセロナ在住のグラフィックアーティスト、エミル・コザックとのスモールコレクション。胸元にプリントされた「Sea you soon」のメッセージが意味するところは? 手元にはまだ、役割を終えてゴミになる袋がある。