Update:201309.04WedCategory : コラム

<編集後記>「ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡」を観て、ソーシャルシネマの観方を考える


 ドキュメンタリー映画を観るのは苦手だ。

 この世にあるその手の映画は、社会へ問題提議を行うものがほとんどで、リアリティがありすぎるからだ。(現実で起こっていることなのだから、当たり前なのだけれど )
 受け止めるがツラく、観終わった後、気持ちの整理がなかなかつかない。大概は、心がざわつき、もやもやとした気持ちを消化できない。

(ちなみに、社会的テーマを扱ったドキュメンタリー映画を「ソーシャルシネマ」というらしいことも本イベントで知った)

 どうしてそのような気持ちになるのか、本イベントを通して理由がわかった。

イベント当日の様子はコチラ:
<イベントレポート>論-RON- × Social Cinema Vol.1@代官山シアターサイバード

 ひとつには、その手の映画は、映画内で定義された問題に、決して答えを持っていないにも関わらず、観ているこちらとしては、何かしらの完結(答え)を求めているからだ。
 ハッピーエンド、バッドエンドという言葉があるくらい、私たちは、1本の映画をその時間内に完結させたがる。私たち人間が抱える問題は、複雑で、答えの出ないものばかりなのだから、120分そこらで、◯◯エンドなどというフィクション映画のようにはいかないのは当たり前だ。

 そして、もうひとつは、映画内で定義された問題に対して、誰かと論じる場がないからだと思う。共に社会で生きている人たちと、映画を通して自分が感じたこと、悲しかったこと、幸せに思ったこと、とにかく自分の心のざわつきを、何か声に出してみることをしていないからだと思う。

 そして、時間が経つにつれて、当時思っていた気持ちが薄らいでいき、その映画を観たことがなかったことになっていく。大概は、そういう結末だ。

 本ベントでは、完結(答え)のない映画を多くの人たちと観て、論じる場があった。

 だから、心のざわつきを少し希望に変えることが出来た。「ああ、ドキュメンタリー映画は、こういう風に観るものなんだ」と、腹落ちした。個人的には良い経験だったと思う。

「ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡」について

 最後に、上映された「ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡」に触れておきたい。
 本映画は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品であり 、2010年国際ドキュメンタリー協会IDA最優秀賞、他30以上の賞を受賞した名作。「芸術で世界を変える! ! 」ブラジル生まれのアーティスト ヴィック・ムニーズの決心が、世界最大のごみ処理場で働く人々の人生を輝かせていく感動のドキュメンタリーである。

 私も会場で映画を観たが、何度も泣きそうになった。映画では、リオデジャネイロ郊外にある世界最大級のゴミ処分場「ジャウジン・グラマーショ」での2年間の活動が記録されている。

 日本では、ゴミ分別が当たり前になっているが(一部、マナーの悪い人たちには守られていないが)、ブラジルでは、企業や家庭のゴミが一即多にゴミ処理場に集められる。映像からも異臭が伝わってきそうなとても劣悪な環境のように見えた。

 そのゴミ捨て場には、幼い子供から老人まで、老若男女の「回収人」がいて、リサイクル資源を入れる大きな袋を片手にひろい集めてまわる。集めた資源は業者が集めに来て、それで報酬をもらっている。

 お金はそこまで悪くはない、働いている人たちは、口々に「回収人」であることを誇らしいと言う。半分本当で、半分はどこか嘘だ。彼らは、明らかに社会から取り残されている。

  アートの力で、この劣悪な環境をどうにかしたいと考えたのが、アーティストのヴィック・ムニーズだ。彼はロンドンに拠点を置く芸術家で、ブラジルに生まれ、貧しい家庭環境で育った。

 彼は現地の足を運び、そこで働く人々を取材し、アートのモデルとなる「回収人」たちを集めた。集められた「回収人」たちはアート製作に携わり、その中で彼らの意識がどんどん変わっていく。彼らの表情がみるみるうちに変わっていくのが見て取れた。

 彼は、製作した作品を世界的に有名なオークションで販売、そのお金を回収人達が所属する協会に全額寄付する。

 映画の後半では、一連のゴミ処理場で働く彼らの環境を変えることが出来ないにも関わらず、彼らの意識だけを変えていくことが良いことなのかの是非を問う。とてもむずかしい問題である。

 ただ、映画を観た私が、最後にひとつだけ言えることは、彼らの意識を変えたことで、彼らの行動や、生き方が変わったということだ。
ぜひ、気になった方は映画を観に足を運んで欲しい。詳細はコチラ

▼予告編

ドキュメンタリー映画……、これからは観る機会を少しだけ増やそうと思う。観終わった後の心のざわつきを覚悟の上で。

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