パイプマスターズ優勝はケリー、タイトルはミック!
Kelly Slater (USA)/ Photo: Jeremiah Klein
多分、地球上で、最も魅惑的な波をメイクしたケリー。
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しばしのウェイティングを経て、予想通り10~12フィート+までサイズアップしたパイプラインで、ついに再開した2013 Billabong Pipe Masters。いよいよ大会もファイナルデー。
注目のクォーターファイナル、ワールドタイトルに王手をかけたミック・ファニングとヤディン・ニコルの対決。ここでミックが勝てば、ケリーの動向に関係なく、2013年のワールドタイトルは彼の手中に収まるという一戦。中盤からリードを奪ったのは今大会のダークホースともいうべきヤディン。しかしヤディンがこのまま逃げ切るのかと思われた残りわずかなタイミングでミックが動いた。ディープなポジションからビッグなパイプをメイク。9.7を叩き出す逆転劇。この瞬間、ミックのワールドタイトルが確定した。
さてミックのタイトル獲得をはじめ、様々なドラマを経て、ファイナルに駒を進めたのはケリー・スレーターとジョンジョン・フローレンス。パイプとの相性がいいケリーVSパイプを知りつくすローカルのジョンジョン。ビーチを埋め尽くすギャラリーの熱い視線が見守る中、頂上決戦はスタートした。
まずはローカルらしく奥に陣取るジョンジョン。ミドルサイズには一切手を出さず、とにかくビッグセットだけを待つ作戦。一方、ケリーはそのやや手前にポジショニングし、ジョンジョンにプレッシャーを与えつつ隙を突こうという、熟練の試合運び。
完璧な波以外をスルーし続ける二人だったが、先手を打ったのはジョンジョンだった。ローカルらしいパフォーマンスで8.50。だがケリーも黙ってはいない。見事なストールでバレルの奥深くに潜り込み、スピットと一緒に飛び出す完璧なまでのライディングで、ほぼ満点に近い9.87をスコア。甲乙つけがたいハイパフォーマンスで、均衡した戦いを繰り広げた。
そして刻々と時間が過ぎ、ヒート後半に再びケリーが始動。戦いをまとめるべく、巧みなボードコントロールでバレルを抜けたかと思えば、次にはビッグフローターまで決める大技。スコアは6.50。ジョンジョンが逆転するには7.88が必要という状況となった。
ギャラリーが固唾をのんで見つめる沖で、ぎりぎりまでセットを待ったジョンジョンが勝負に出たのはバックドアへの一本だった。際どいドロップから深々とバレルに包まれ、ハイスピードで抜け出す妙技を披露。逆転したかと思われたこのライディングのスコアは…、わずかながら逆転には及ばない7.40。この瞬間に勝負が決した。
世紀の一戦を制したのはケリー・スレーター。テクニックもさることながら、そのコンテストスキルはまさに一級品。見る者すべてにそう感じさせる完璧なまでの戦いぶりで、ケリーがパイプラインを制し、最終戦を有終の美で飾ったのだった。
惜しくも最後の戦いで敗退を喫したジョンジョンだったが、ファイナル進出を果たした時点でトリプルクラウンの座を獲得。ハワイアンであるジョンジョンが、その輝かしいその歴史に名を刻んだ。
こうして熱く戦われてきた2013年度のワールドツアーは、ミックのタイトル獲得、ケリーのパイプマスターズ優勝で幕を閉じた。
◆トリプルクラウン公式サイト
http://www.vanstriplecrownofsurfing.com/