Update:201309.20FriCategory : Namiaru? News

燃える男タジ・バロウが 念願のローワーズ優勝!

3週間の禁酒と
18本のサーフボード

カリフォルニア・サンクレメンテ、ローワー・トラッセルズを舞台に、長く、熱く戦われてきた「Hurely Pro 2013」もついにファイナルデーを迎えた。

徐々にサイズダウンが進むローワーズに一抹の不安がよぎったが、それでもスモールコンディションながら走れるライトとレフトのホレたセクションは健在。さすがは世界に誇るポイントブレイクだ。とはいえ、サイズ的には本来のローワーズの姿はそこにはなく、またセットの波数も限られているため、選手たちは高得点が出しにくく苦戦を強いられた。

WCTイベントを運だけで勝ち上がるのは不可能だ。特にパーフェクトなコンディションじゃない時はなおさらだ。事前の準備、ヒート戦略、忍耐力、気合い、良いボード選び、これらが勝利を収める上でとても重要となってくる。今回のように決して良いとは言い難いコンディションで勝つのは、6-8フットの完璧なディープバレルで10点満点を出して勝利するよりも難しいだろう。

他にも勝利する上で重要なのが「勝ちたい」という気持ち。すべてのトップ選手がトロフィーをホームに持ち帰る可能性を持っている。だが、勝利は一番それを望んだモノが手にするものだ。今大会、ローワーズで一番勝利に貪欲だったのは、そうタジ・バロウだ。

「毎ヒートをただ確実にこなしていくだけさ」とか、「決勝までの道のりは長いね」とか、「ただアウトに行って楽しむだけさ」とか、インタビューしてもタジは一度もお茶らけたことを言わなかった。どちらかといえば、真剣そのものといった感じだ。

何週間も前からローワーズに入り、この地で一番の腕前といわれるシェイパー、マット・バイオロス(lostのシェイパー)とのボード調整で手にしたボードは、なんと18本。また彼は3週間の禁酒を敢行し、毎日毎日どんなコンディションでもサーフィンをし続けた。そこまで情熱を傾けさせた理由は何だったのだろう…。
それは2008年のトラッセルズ。忘れもしないケリー・スレーターとの一戦。その時の敗北が、タジに火をつけたのだ。

タジを燃えさせた人物はもうひとりいる。それは先に述べたシェイパーのマット・バイオロスだ。
「マットは良いタイミングで僕に厳しいことを言ってくれたよ」とタジ。
「彼は僕のボードが良くないと思っていたらしく、“ボードを変えた方がいいよ”って言ってくれたんだ。それで彼のボードを試してみたら、すごく良かったんだ」。
「“僕と自分のためにも違うボードも試して欲しい”とまで言ってくれて、そして彼のボードに乗る度に僕自身もどんどんライディングが良くなっていったんだ」。
「彼は“自分に合ってないって思われながら、自分のサーフボードに乗られることが一番嫌いなんだって。その点、今回の僕と彼のボードは絶妙にマッチしていたから、彼もどんどん“試してくれ”って言ってくれたんだと思う。そこで僕もそれに答えるべく言ったんだ。“絶対に勝つよ!”ってね。結果、自分自身とボードの性能を証明することができて最高だよ!」。

「最初のラウンド1~2からタジは高い点数を出していたんで、とにかく興奮したね」と、タジのトレーナー、ジョニー・ガノンは説明する。
「トラッセルズに入ったばかりの頃は決して本調子ではなかったんだ。でもコンテストが進むにつれて、彼が調子を上げていくのが見て取れたね。そしてジョディー・スミスとのセミファイナル、ジュリアン・ウィルソンとのファイナル。もうファイナルのあたりではいつものタジらしさが溢れ出ていたね」。

「充分やったよ。たくさんやった。だって、僕はこのイベントでずっと勝ちたかったんだからね」。試合後、ローワーズを見ながら楽しそうにタジは語った。

一方、もうひとりのファイナリスト、ジュリアン・ウィルソン。華麗でアクロバティックなライディングで高得点を叩き出し、ジュリアンが試合を制するだろうと思っていた人も多かったに違いない。
ラウンド5をスルーできたことで、体力も温存できたジュリアンは、クォーターでジョシュ・カーを、セミファイナルではミシェル・ボウレズを下し、このまま優勝かとと思われた。
しかし決勝戦ではそうはいかなかった。
「今日はホントについてなかったよ」と、彼は試合後静かに言った。
「タジがマジで勝ちたいと思っているのは分かってた。だけど僕だって勝ちたかったさ。でも今回は、海が彼に味方したようだね。ファイナルでタジは数回ミスをしたんだ。だけど最終的にはそれをカバーしていた。今回の僕はタジを覆すだけの魔法を持ってなかったんだ」。

さて、話はタイトルレースに移ろう。この勝利でタジがランキング4位にアップ。かたやジュリアンはランキング7位に。そしてミックはランキング1位で、次のヨーロッパ戦を迎える。ケリーが2位、ジョエル・パーキンソンがランキング5位。
今回、ケリー、パーコ、ミックが早いラウンドで負けたため、タイトルレースはそこまで大きく動かなかったが、タイトルの行方が分からない接戦となってきたのは確かだ。これからワールドツアーも後半戦を迎えるが、ローワーズの神は誰を後押しするのか、いよいよ面白くなってきた。

次回ワールド・チャンピオンシップ・ツアーは、9月26日から始まるWCT第8戦クイックシルバープロのフランス戦。目の離せない戦いはまだまだ続く。