Update:201406.17TueCategory : BLUERマガジン

[column]川の向こうから見た景色-The view from the other side of the river.

川の向こうから見た景色
The view from the other side of the river.

ぜいたくな話かもしれないけれど、実のところ、ニューヨーク暮らしも最近はちょっぴり小食気味だったりする。

この街にやってきた最初の数年は、高層ビルの足元をまるで小ねずみのように縦横無尽に動き回った。いつもどこかで、必ず何かおもしろいことが起きている。人がいてトレンドがあって、流行のエリアもどんどん変わる。それがニューヨーク暮らしの魅力だ。毎日が楽しくて、あっという間に時は過ぎた。

けれども、ある日のことだった。マンハッタンのすぐ横を流れるハドソン川を隔て、お隣のニュージャージー州側からこの街を眺めた時、心がホっとした。その時、はっきりと気がついたのだ。私自身がこの街との距離をずっと欲していたことを。川越しに眺めた摩天楼はとてもきれいで、830万人が暮らしているようには思えないほどずっとコンパクトに見えた。

それからだっただろうか。私は折をみては郊外に足をのばしはじめた。

地下鉄やバスに乗って、時に自転車に乗って。高層ビルに背を向けちょっと旅するだけで、これまで見たこともないニューヨークの風景に巡りあえる。

いまや”ちょっぴり外遊び”はかかせないものとなり、そんなささやかな変化が、今年で17年目に突入する私の都会暮らしを少しずつ面白くしてくれている。

ニュージャージー州ハミルトンパークから見晴るかす夕暮れのマンハッタン