Update:201411.22SatCategory : BLUERマガジン

限界の更なる先へ。世界のエクストリーム・ランニング

http://runners-to-the-pole.com/?attachment_id=827

ここ最近、山の中を走るトレイルランニングも定着し、マラソン以外のランニングも昔に比べれば知名度が上がってきた。しかし、国内だけで見ればまだまだレースの種類も多いとは言い切れない。

有名なレースでは日本海から太平洋へ日本アルプスを超える「トランス・アルプス・ジャパン」があるが、富士の裾野で行われる「ウルトラトレイル・マウントフジ (UTMF)」など100kmを超えるレースがやっと出てきたというくらいだ。しかし、国内のレースではなく世界に目を向ければ、そこには数多くのエクストリーム・ランニングの世界が待っている。

■最も有名な「サハラマラソン」
http://www.marathondessables.com/archives/28mds/en/stage-journal-2/photo-controle/category/5-08-04-etape-2-stage-2.html

世界で最も有名なサハラ砂漠を走るエクストリーム・ランニング。7日間の5ステージ制で約230Km。一週間毎日砂漠でマラソンをするのとほぼ同じ換算だ。食料や寝袋、水などは全て持参したまま砂漠を走り続ける。水だけは補給してもらえるがそれ以外は全てを用意していなければいけない。このようなスタイルは他のレースでも同じで、ステージ制であれば日毎にゴールが設定されている。しかしどのような選手でも1日目で必ず限界はやってくる。それでも残りの工程を走り続ければならない。限界を超えた世界を残りの距離分楽しめるという訳だ。

■グランドキャニオンを走破する「ground to ground」
Photo:http://www.g2gultra.com/photos-videos/photo-gallery

グランドキャニオンで行われる7日間6ステージ制の273Km。岩を駆け上り砂漠も走るというありとあらゆる地形を楽しめるレース。足の裏の皮は剥け激痛と闘いながらそれでも走り続ける。なぜそこまでして走るのかという疑問は、こういったレースに参加する者にとっては愚問でしかない。そしてその答えを理解するにはレースに参加し、限界を超えた経験をしなければ理解できないだろう。面白おかしいだけが楽しいのではない。悔しい思い、つらい思いそういったものが入り混じり他では経験できない“楽しさ”を感じなければ答えに対し理解が出来ないからだ。

■世界一の極寒「北極マラソン」
http://runners-to-the-pole.com/?attachment_id=366

このレースはマラソンであり42.195kmを走るもの。しかしその場所は北極。-30度という極寒の世界が待ち受けている。ステージ制ではなく距離も短めなのでまずはここからチャレンジ。という訳にもいかない。しかし、参加する選手のほとんどが初めての北極。”出来る出来ない”ではなく”やるかやらないか”そのチャレンジ精神がエクストリーム・ランニングへの入り口かも知れない。

■より過酷なノンストップレース「Iditarod trail invitational」、「Susitna 100」
http://alaskaultras.com/2014/03/iditarod-trail-invitational-1000-results-2014/

Iditarodとはアラスカを縦断する伝統的な犬ぞりレース。距離は1000マイル(1600km)。しかしそのコースを人間が走るというのがこのIditarod trail invitational。しかもステージ制ではなくすべて自分でプランニングして走破するというもの(制限時間は30日)。1000マイル以外に350マイル(560km)10日間制限というものもある。また、同じコースを走る「Susitna 100」というレースでは48時間以内に100マイル(160km)を走破するというもの。北極マラソンや南極マラソン、その他のレースに比べて名前や距離にインパクトはないが、ノンストップ制のレースのため、実はステージ制よりも数段と過酷なのである。

しかもアラスカの厳冬期に行われるもので、-30度という環境にもなる意外と知られていない選手たちを苦しめるレースなのである。Sustina100で言えば距離は短いがどんなに速い選手でも必ず2度の闇夜を経験することになる。深夜になればもちろん周りに明かりはない。ヘッドライトのみで走り続けることになる。そして大雪原を走る場合は明かりで照らされるものがなく、ひたすら足元の雪だけを見続けて走らなければならない。孤独、寒さ、眠気、あらゆるものが襲いかかってくる闇夜を2度も経験するのだ。距離が短い、制限時間が短いというのもレースによっては過酷な条件となる。

南極や北極、そして砂漠などインパクトのある環境ではそこを走破したという賞賛を他人から受けることがあるが、なんのインパクトもなくただ過酷なレースはそういった賞賛を得られることもない。しかし、そのレースにチャレンジする選手たちはただ自分自身への挑戦のために挑んでいるのである。そういったメンタルで挑まなければこの過酷なレースは走破出来ないであろう。

エクストリーム・ランニングのレースに参加する選手は、賞金や賞品、そして名誉を求めていないだろう。ではレースに何を求めているのかを聞くと、ほとんどの選手は「過酷さ」と答えるに違いない。

 http://www.endurancelife.com/bucket-list.asp