Update:201510.09FriCategory : BLUERマガジン

サーフボードにおける「揚力」と「ボリューム(浮力)」の関係

一般的なサーフボードは止まっている時点ではボードの上に立ち上がることは難しい。

サーフィンをしない人からすれば、静止している時でも、立てるぐらい浮力があった方が良いようにも思えれかもしれない。

しかし、「すべての事には意味がある」のである。

サーフボードはウネリの力とパドリングの力を合わせることで、「揚力」を得てサーフボードの上に立つ事が可能になる。

「揚力」とは、海水におかれた、サーフボードにはたらく力のうち、流れの方向に垂直な成分の事。

通常サーフボードと海面に相対速度がある時に発生する力をさす。(この時にサーフボードが静止していても働く浮力は含まない)「揚力」は飛行機が飛んだり、鳥が飛ぶ原理と同じ原理。

サーフィンをする時に波が小さい場合には、波の速度も遅い。波のサイズがサイズが大きくなると、波の大きさに比例して速度も上がる。波が小さい場合、速度が遅くパワーも無いのでサーフボードの浮き上がる力の「揚力」を得ることが難しい。

そのような理由から、小さい波の時には、面積も容積も小さいショートボードでは波に乗りづらいのである。

一般的なショートボードはハイパフォーマンスなサーフィンに適している。

波の一番力のあるパワースポットをキープしながら、ターンをつなぎ、技を入れながらに波に乗る。ショートボードは全体の長さも短く、アウトラインのカーブが多く、余分なボリュームも少ない。ある程度サイズのある波でコントロール性能を生かしたダウンザラインでの加速や、深いターンなどのハイパフォーマンスサーフィンに適している。

小さい波では長くて、幅があり、厚く、容積にまさるロングボードのほうが簡単に波に乗る事ができる。

ロングボードは小さな波を滑るのに最適なデザイン。サーフボードをターンしたり、トリミングやストールしながら、スピードコントロールして波に乗る。上級編ノーズライディングなどのトリックをいれてライディングする。つまり小さい波では、ショートボードよりロングボードを使ったほうが簡単にテイクオフできるのである。

単純に「揚力」を得るだけであればロングボードが有利である。

つぎに波に乗ったあとのコントロール性についても考えてみよう。

波に乗った場合のコントロールの難しさは「ボリューム(浮力)」に起因することが多い。

まずはショートボード。現在世界のトッププロの使う、ハイパフォーマンスショートボードは「ボリューム(浮力)」によるレールコントロールの難しさを克服する為のデザインなのである。

ハイパフォーマンスショートボードのデメリットとしては性能を引き出す為に、ある程度の波のサイズとボードに乗るサーファーのスキルが必須となる。

つぎにロングボードで考えてみよう。長さも幅も厚みもあるロングボードのデメリットとしては、過剰な「ボリューム(浮力)」により、大きな波や掘れた波などでのレールコントロールが難しくなる。

結論としては、ショートボードは小さい波には乗る事が難しいが、乗ったあとのコントロール性には優れる。コントロール性の優れるボードは波のポジションの一番良い部分をキープしやすいのでスピードも出しやすい。

それに比べてロングボードは「ボリューム(浮力)」もあり、長く、幅も広いので、小さい波に乗るのは簡単だがコントロール性には劣る。特に大きな波では、波の一番良い部分をキープするのが難しい為に、スピードもショートボードと比べると速度は遅くなる。これがショートボードとロングボードにおける、「揚力」と「ボリューム(浮力)」の関係である。

これらの事を踏まえて、波のコンディションに合わせて道具を選ぶことが、サーフィンを楽しむ上でとても大切なことである。

「すべての事には意味がある」のである。

All photos by Jun Ikeda,BLUER