Update:201702.12SunCategory : BLUERマガジン
into the Ocean-海に臨む瞬間
海に入っていく瞬間は、人によって感覚がどれだけ違うのだろう。
天候や太陽の位置、波のサイズや水温によっても同じ感覚はないし、慣れた人とそうでない人でも、感覚値はまるで違うのだろう。
飛行機の離陸の瞬間に、墜落したらどうしようと嫌な瞬間捉える人が多いかと思うが、
旅なれてくると車輪が地を離れた浮遊感に変な高揚感につつまれ、雲をひたすら抜けていく音とGもあいまって、どこかに引っ張られるような昇天感覚がある。
それは、もしや臨死体験のような感覚なのではないか、と考えることがある。
ー海に入っていく瞬間。
危険と隣り合わせであり、自分を律する気持ちをもちながら、くずれゆく波を乗り越えてウネリのリズムを感じとる入水の瞬間は、どこか、そんな飛行機の感覚と似ている。
ー高揚感と、危機感と、そして、どこへ行ってしまうのだろうと。
そして、海からあがり揺れ動くことのないショアブレイクのボトムを踏みしめた瞬間、思うのだ。
それは着陸した安堵感に似て、なにごともなく還ってこれたことを、感謝する。
そしてウェットから洋服に着替え、車に乗り込んだとき、その幸せ感を実感するのだ。
海へとのぞむ瞬間。
それは不思議な体験の入口でもある。
words by Naoko Tanaka
Photo by BLUER